【教えて!沿線のお医者さん!】コロナ禍で増える“かすれ声”、喉の筋肉が衰えているのかも!?(兵庫医科大学+阪神電車)

リモートワークやリモート授業が多くなる中、「久しぶりに会社や学校で会話をしたら声がすぐにかすれてしまった」というお悩みを多く聞くようになりました。どうしてこのような症状が増えたのでしょうか。声のかすれ(声枯れ)の原因から対処法まで、兵庫医科大学の貴田紘太先生に詳しくお聞きしました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年5月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
助教 貴田 紘太先生
頭頸(とうけい)部全般を専門とする。頭頸部腫瘍の治療後に、発声や嚥下(えんげ)が困難になった入院患者の詳しい検査やリハビリ指導も行う。
『声がかすれる原因は様々です。症状が続くなら、まずは耳鼻咽喉科で検査を受けるようにしてください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 声がかすれる原因は?

声帯自体に異常がある器質的疾患と、声帯の動きが悪くなる機能的疾患の大きく2つに分けられます。器質的疾患は、声帯ポリープ、声帯結節(声帯に節のようなものができる病気)、喉頭(こうとう)がん、声帯が痩せてしまう声帯萎縮、風邪、喫煙やアルコール摂取などによる喉の炎症が代表的です。機能的疾患は、脳梗塞(のうこうそく)や食道がん、肺がん、甲状腺がん、大動脈瘤(りゅう)などが考えられます。このように声がかすれる原因は様々で、原因が何かを突き止めるには、検査が必要です。

Q 声帯について詳しく教えて!

声帯は、靭帯(じんたい)と筋肉でできていて、表面が粘膜で覆われています。一般に喉仏といわれる軟骨の中に左右2本あり、Vの字のような形をしています。大きさは、男性で17~21mm、女性で12~17mmといわれています。声帯は呼吸をするときは開いていますが、声を出すときには、Vの字の上部が筋肉の力でキュッと閉じられます。このときに呼気が通ると、その気流で声帯の粘膜がブルブルと震えて声が出る仕組みになっています。また、声帯は気管と食道の分かれ道にあり、食べ物が喉を通るときにもキュッと閉まって、気管に食べ物や唾液が入らないようにブロックをする役割もしています。

Q コロナ禍で声がかすれる人が増えているのはどうして?

コロナ禍で、人と話す機会が大幅に減ったことが原因のひとつだと考えられます。声帯は筋肉によって動いていて、その筋肉は何もしなければ加齢とともに痩せていきます。コロナ禍になる前は、会話を楽しんだり、カラオケで歌ったりする機会が多く、自然と声帯を動かす筋肉が鍛えられていました。そのため、声がかすれるまで筋肉が痩せることはなかったはずです。声を発する機会が減って筋肉が痩せてしまうと、うまく振動させることができず、声がかすれてしまいます。

Q 声帯を鍛えるにはどうすればいい?

喉の筋肉を鍛えることと、肺活量を上げることが重要です。一番のオススメは、ストローを口にくわえて「フゥー」とできるだけ長い時間息を吹き続けるという動作を1日5~10分くらい行うこと。コロナ禍でも自宅で実践しやすいですし、簡単な動作で、喉の筋肉と肺活量の両方を鍛えることができます。コップに水を入れて、ストローの先をつけ、ブクブクさせると分かりやすいと思います。ほかにも下表のような運動や動作が効果的です。

Q 喉の筋肉が衰えてしまうとどうなる?

先述したように、声帯には声を出すという大きな働きのほかに、食べ物を気管に入れないようにブロックするという大切な役目も持っています。そのため声帯が痩せてしまうと、キュッと閉じても隙間が空いてしまって、声が出にくくなるだけでなく、食べ物を飲み込む力が衰えて、ブロックできずに誤嚥(ごえん)[食べ物や唾液が気管に入ること]を起こしやすくなります。最近は、誤嚥性肺炎[食べ物や唾液と一緒に細菌が気管を通って肺に入り炎症を起こす]で亡くなる高齢者も少なくありません。声帯は加齢とともに痩せていきますから、特に高齢の方は、毎日声帯を鍛えることを意識して過ごすことが大切です。また、声のかすれ=声帯の萎縮が原因とは限りません。重大な疾患が隠れていることがありますので、2週間以上症状が続くようであれば、「話さないから声が枯れてきた」と決めつけず、耳鼻咽喉科を受診してください。

 

 

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