【教えて!沿線のお医者さん!】頻尿(ひんにょう)や尿もれはなぜ起こるの?(神戸大学+阪神電車)

40代で約10%、60歳以上になると70~80%の人が経験しているといわれる「頻尿」「尿もれ」。「年だから仕方ない」「女性なので恥ずかしい」と診察を受けない人も多いようです。治療を受けたほうがいいケースはあるのでしょうか。原因も含め、神戸大学医学部附属病院の中野雄造先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 泌尿器科
准教授 中野 雄造先生
尿路性器感染症を専門とし、頻尿・尿もれの治療にも携わる。手術支援ロボットによる低侵襲(ていしんしゅう)手術も多数手掛ける。
『頻尿や尿もれは、暴飲暴食、便秘、長時間の座位態勢などで悪化するといわれています。規則正しい生活を心がけてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q トイレに行く回数が何回以上なら頻尿?

正常な排尿の回数は、昼間は4~7回、夜間は0~1回とされていますので、それより多い場合は頻尿だといえるでしょう。夜間は、脳が腎臓に尿量を減らすように働きかけますので、正常であれば尿意を感じて目が覚めることはありません。尿意ではなく睡眠が浅くて目が覚めたとしても、夜間に何度もトイレに行くようであれば頻尿といえます。原因はさまざまで、水分の取りすぎや冷え、精神的な緊張などの場合もありますが、病気が原因で発症することもあります。

Q 頻尿の原因になる病気は?

女性の原因で多いのは「過活動膀胱」です。加齢などで膀胱を膨らませて尿を溜めることができず、本人の意思とは関係なく収縮して排出しようとする状態です。一方、男性の原因で多いのは「前立腺肥大症」です。膀胱の下部にある前立腺が肥大して尿道を圧迫する病気で、頻尿のほかに、残尿感や排尿困難なども生じます。そのほか、糖尿病や中枢神経の病気で脳と膀胱をつなぐ神経が損傷し、尿を最後まで出し切れなくなる「神経因性膀胱」でも頻尿になります。糖尿病になると、喉が乾いて水分摂取量が増えるため、多尿による頻尿もひき起こしやすくなります。

Q 尿もれの原因は?

尿もれは、意図していない時に、量にかかわらず尿が出てしまうことをいいます。お腹に力を入れたときにもらしてしまう「腹圧性尿失禁」、排尿時に尿を出し切ることができず、尿が溜まっていき膀胱からあふれ出てしまう「溢流(いつりゅう)性尿失禁」、急に排尿したくなって我慢できなくなる「切迫性尿失禁」が代表的です。腹圧性尿失禁は女性に多く、膀胱を下から支えて膀胱の出口や尿道を閉める働きがある骨盤底筋が、加齢や出産などで伸びて筋力が弱まることが原因です。溢流性尿失禁は男性によく見られる症状で、前述した前立腺肥大症が主な原因です。切迫性尿失禁も、男性の場合は前立腺肥大症が原因であることが多く、女性の過活動膀胱でも発症します。ほかに、脳の病気で膀胱への指令がうまく届かずに尿もれを生じるケースもあります。

Q 頻尿や尿もれがあったら、診察を受けたほうがいい?

診察を受けたほうがいいのは、頻尿や尿もれの症状以外に残尿感や血尿がある方、尿が濁っている状態が続く方、排尿時に痛みがある方です。膀胱炎などの尿路感染症を併発している可能性があるため、薬による治療が必要です。糖尿病やがんなどの病気が隠れていることもありますので見過ごさないようにしてください。頻尿や尿もれ以外の症状がない場合は深刻にならなくて大丈夫ですが、外出できない、夜寝られないなど、生活の質が落ちているなら、ためらわずに医師に相談してください。前立腺肥大症が原因であれば、薬や手術で良くなりますし、過活動膀胱による腹圧性尿失禁や頻尿の方も、薬の治療や骨盤底筋のトレーニングなどで改善します。

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」で紹介している今月の特集や駅周辺のスポット、イベント情報はWEBでもご覧いただけます。
https://www.hanshin.co.jp/area/

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/