【教えて!沿線のお医者さん!】要介護にならないために!フレイルの基礎知識(兵庫医科大学+阪神電車)

2021年、厚生労働省より発表された日本人の健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)と平均寿命との差は男性で8.73歳、女性で12.06歳。この差を縮めるために、今注目されているのがフレイルです。兵庫医科大学の新村 健先生に、フレイルについて詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年3月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 総合診療内科学
主任教授 新村 健先生
総合診療と老年医学を専門とし、ひとつの病気や臓器を診るのではなく、身体の全体を診て健康状態を長く保つための指導や治療を行う。2015年から丹波篠山圏域の高齢者を対象とした疫学調査を主催。フレイルの研究にも積極的に取り組む。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q フレイルとは何ですか?

フレイルは英語の「Frailty(虚弱)」が語源で、年を取るにつれて臓器や身体のいろいろな働きが低下していくことで、様々なストレスに対する適応力が下がり、健康を害しやすくなる弱々しい状態のことをいいます。具体的には、「体重の減少」「握力(筋力)の低下」「疲労感」「歩行速度の低下」「身体活動量の低下」の5項目について詳しく問診や検査を行い、3項目に当てはまればフレイル、1~2項目でプレフレイル(フレイルの前段階)だと診断しています。老化によって筋力が低下する「サルコペニア」や、身体能力が低下する「ロコモ」も、広義ではフレイルに含まれるといえます。

Q フレイルになるとどうなる?

フレイルは要介護状態になる手前の段階と位置づけられています。フレイルになっても何もしなければ、寝たきりになったり入院したりする危険や、認知症、命に関わる病気になる可能性が高くなることが分かっています。しかし、プレフレイルやフレイルの段階で適切に対処すれば、より健康に近い状態に戻し、将来要介護になることを避けることができます。今は後期高齢者健康診査でフレイルかどうかを調べることができますので、健診を受け、フレイルの疑いと指摘されたら、指導を受けるようにしましょう。また、もの忘れや身体の変化を老化現象だと見過ごさないで、自身でフレイルを疑って気づくことも大切です。

Q フレイルの可能性がある身体の変化は?

自身で気づきやすいのは体重の減少です。中年層では肥満が様々な病気の原因になりますが、高齢層になると痩せている人のほうが健康を害しやすいことが明らかになっています。意図していないのに、体重が半年で2kg減った場合は注意が必要です。そのほか、疲れやすくて動きたくない期間が2週間以上続く場合や、青信号の間に横断歩道を渡り切れなくなる場合も、フレイルの可能性がありますので、一度診察を受けてみてください。フレイルかな?と思った際に相談できる、かかりつけ医や地域の相談窓口を持っておくと安心です。

Q 要介護にならずに健康に過ごすには?

食事、運動、社会参加を適切に行うことが大切です。食事は、1日に必要なカロリーとたんぱく質をしっかりと摂ること。ビタミンB、C、D、葉酸もフレイル予防に良いとされています。筋肉量の維持に必要なたんぱく質は、体重1kgあたり1日に1.1gとされ、牛肉を100g摂っても約10~20gにしかならず、1日の目標摂取量に足りません※。三食をしっかりと食べて、様々な食物から摂取するようにしてください。運動量は個人差がありますが、家で座っている30分間を、家事でも散歩でも身体を動かす時間に変えると、フレイルになるリスクが減るといわれています。また、社会参加が低下するとフレイルになりやすいことが分かっています。コロナ禍で難しいかもしれませんが、感染対策をされているイベントや体操教室などに出かけてみるのもおすすめです。

※たんぱく質の摂取目標量は性別、身長、体重、活動量、健康状態に応じて異なる。

 

 

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