【教えて!沿線のお医者さん!】身体がむくむのはなぜ?病気の可能性はある?(兵庫医科大学+阪神電車)

コロナ禍でおうち時間が増え、身体のむくみを訴える人が増えてきています。ただの運動不足だと思っていたら、何らかの病気の症状である可能性も。そもそも、むくみはどうして起こるのか? どんな状態なら医療機関で受診したほうがいいのか? など、兵庫医科大学の朝倉正紀先生に詳しくお伺いしました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2022年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学
教授 朝倉 正紀先生
専門は心不全。最近では、尿にたんぱく質が混じっている人は心不全が悪化する傾向があることに着目し、研究を進めている。
『心不全患者さんの自宅での生活には周りのサポートが必要です。SNSを活用した地域連携にも取り組んでいます。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q むくみが生じる仕組みを教えて!

むくみとは、水分が溜まって全身あるいは身体の一部が腫れている状態のことで、指で押すとへこむむくみと、押してもへこまないむくみがあります。細胞と細胞の隙間(細胞間質(かんしつ))には、常に血管から水分がにじみ出し、再び血管内に回収されたり、リンパ管に排出されたりして一定量が保たれています。しかし、血管からにじみ出す量が増えたり、血管へと回収される量が減ったりすると、細胞間質の水分量が増えて、押すとへこむむくみを引き起こします。押してもへこまないむくみは、皮膚の下に水分を溜め込む物質が増えることによって起こります。

Q むくむ原因はなに?

押すとへこむむくみの原因は主に、

①血液の流れが悪くなる
②血管の水分量が増えて血管から血管の外へにじみ出す量が増える
③血管の周りから血管に水分を回収する量が減る
④リンパの流れが低下する

の4つが考えられます。

②で多いのが塩分(ナトリウム)の摂り過ぎによるむくみ。塩辛いものを食べると血液内にナトリウム量が増え、濃度を下げようとして喉が渇き、水分をたくさん摂取してしまいます。そのため、血中の水分量が増え、血管内の圧力が上がってにじみ出す量が増えます。
③は血中のアルブミン※というたんぱく質の量が減ったときに、浸透圧(血管内の水分を保とうとする力)が弱まって起こります。また、心臓・腎臓・肝臓の機能が低下した場合は、①~③が起こりやすくなります。

※アルブミン:肝臓で作られるたんぱく質。血液中の水分を一定に保つ働きをする。

Q 医療機関で受診したほうがいい?

病気の可能性が考えられるため医療機関で受診したほうがいい症状は、「強く押すと痕が残る」「片足だけむくんでいる」「押してもへこまないむくみが急に起こった」などの場合です。中でも最も緊急性が高いのは、片足だけむくんでいる場合。エコノミークラス症候群を発症して、足に血栓ができている可能性があります。血栓が肺に到達してしまうと命にかかわりますので、急いで受診するようにしてください。押すと痕が残るほどの強いむくみは、心臓・腎臓・肝臓いずれかの疾患の可能性が、押してもへこまないむくみは甲状腺機能の低下が考えられます。痕が残るむくみがあって、階段や坂道を上ると息苦しい場合は、心不全を起こしている可能性が高いので、循環器内科の診察を受けてください。何科に行けばいいのか分からない場合も、まず循環器内科か内科で血液検査を受けてみるといいでしょう。

Q どんな診察を受けるの?

循環器内科では、まず聴診器で胸の音を聴き、胸部レントゲン、血液検査、エコー検査を行います。レントゲンでは、肺に水が溜まっていないかを診ます。心臓の動きが悪くなると、手前にある肺に水が溜まりやすくなるからです。血液検査では、心不全の重症度がわかるBNP値を調べます。同時に、アルブミン値(肝臓)、クレアチニン値(腎臓)、甲状腺ホルモン(甲状腺機能)の数値も確認できるので、心臓に問題がない場合でも、検査結果を見て、他の科の受診をすすめることができます。

Q どんな治療を行うの?

むくみを改善するための治療は、主に利尿剤を使用します。しかし、利尿剤を服用すると腎臓に負担がかかり、腎機能が低下する可能性があります。むくんでいると心配になり、むくみだけを改善しようという方が多いと思いますが、むくみはある程度我慢していただき、根本原因となっている病気の治療を優先したほうが良い場合もあります。

Q むくみを予防する方法は?

一番のおすすめは、適度な運動を行うことです。全身に送られた血液は、筋ポンプ作用(運動による筋肉の収縮で血液を心臓に戻す作用)で血流が良くなり、心臓の負担も軽くなると考えられます。実際、心臓が弱っても、筋肉をしっかり保っている方は重症になりにくい傾向にあります。特に足は第二の心臓といわれます。手より足がむくみやすいのは、重力で足に水が溜まりやすいせいもありますが、手は足より動かしているからという理由もあると思います。第二の心臓が弱らないように普段から気をつけてください。ただし、激しい運動は心臓に負荷がかるので、散歩ができる方は、脈拍が15秒間に25~30回程度をキープし、休憩を挟みながら行ってください。デスクワークが多い方や散歩ができない方は、座って足踏みをしたり、かかとを上げ下げする運動を数十秒ずつ1日数セット行うだけでも大丈夫です。他には、食生活も大切です。特に塩分を摂り過ぎないこと。果物や野菜に含まれるカリウムはナトリウムを排出する作用がありますので、適度に摂るようにしてください。

 

 

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