【教えて!沿線のお医者さん!】坐骨(ざこつ)神経痛は腰の病気が原因!?(兵庫医科大学+阪神電車)

お尻から太ももの裏、ふくらはぎなどが痛くなったりしびれたりする坐骨神経痛。下肢に症状が現れるので、「筋肉が凝り固まって痛いのかな?」と思いがちですが、実は腰部の病気が原因である可能性があります。坐骨神経痛患者を数多く診察・治療している兵庫医科大学の木島和也先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年11月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 整形外科学
助教 木島 和也先生
腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)を原因とする坐骨神経痛の治療を数多く行う。高い技術を必要とする局所麻酔を用いた全内視鏡下脊椎手術が行える関西でも数少ない医師のひとり。
『坐骨神経痛は腰部の病気のサインかも。下肢に痛みやしびれが続くようなら医療機関を受診してください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 坐骨神経痛とは?

私たちの身体を支える大きな役割を担う背骨は、26個の骨が連結してできており、そのうち腰部にある5個の骨を腰椎(ようつい)といいます。坐骨神経は、その腰椎と仙骨(せんこつ)(背骨の下部にある大きな逆三角形の骨)から左右に枝分かれした神経が集まって束になったもので、お尻から太もも裏を通って、ふくらはぎ、足の裏までつながっています。この坐骨神経がつながっている範囲に痛みやしびれが起こったり、筋力が低下して力が入らなくなったりする症状を坐骨神経痛と呼んでいます。坐骨神経のつけ根にあたる馬尾(ばび)(第2腰椎あたりから下部の脊柱管を通る神経。馬のしっぽのような形から命名)や神経根(しんけいこん)(脊柱管を通る神経が枝分かれし、椎骨間から左右に向かって伸びていく根元の部分)が、腰椎の病気によって圧迫されることが主な原因です。なかでも、椎間板(ついかんばん)によって圧迫される「腰椎椎間板ヘルニア」や、骨や靭帯(じんたい)によって圧迫される「腰部脊柱管狭窄症」は、坐骨神経痛を引き起こす代表的な病気。腰椎の病気以外では、梨状筋(りじょうきん)(お尻の深い部分にある股関節を動かす筋肉)が硬くなって、その内側を通る坐骨神経を圧迫する「梨状筋症候群」が原因の場合もあります。

Q 腰椎椎間板ヘルニアについて教えて!

椎間板が何らかの原因で神経が通る空洞に飛び出し、圧迫します。年齢を問わず発症しますが、比較的40代までの若い人に起こりやすい病気です。坐骨神経痛のほかに腰痛を訴える人も多く、痛みは突然発症します。飛び出している椎間板は、8割以上が自然経過で元に戻るため、内服薬や、神経に直接麻酔薬を注射する神経ブロックで痛みを抑えながら自然回復を待つ保存療法を行うことが多いです。

Q 腰部脊柱管狭窄症について教えて!

50代以上の中高年の方に起こりやすい病気です。加齢によって靭帯が分厚くなったり椎間板が押しつぶされたり骨が変形したりして、脊柱管が狭くなり、馬尾や神経根を圧迫します。また、腰椎が大きくずれて神経を圧迫している「腰椎すべり症」、背骨が大きく曲がる「変性側彎症(へんせいそくわんしょう)」、若い時に発症した腰椎が分離する「分離すべり症」がひどくなって発症することもあります。最初はしびれから始まり、痛みが出て、筋力低下へと徐々に症状が進みます。馬尾が圧迫された場合は両足に症状が現れ、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)(歩いているうちに症状がひどくなり、休んで前屈の姿勢をとると楽になる状態。これは、前屈すると狭窄している部分が広がって馬尾の圧迫がゆるくなるため)」が起こりやすいのが特徴的です。神経根が圧迫されている場合は、圧迫されているほうの片足に症状が現れ、間欠性跛行が起こらないこともあります。

Q 腰部脊柱管狭窄症の治療法は?

まず保存療法を行いますが、症状が改善しない場合は手術療法が必要となります。保存療法では、痛みを抑える内服薬や、圧迫されて悪くなった神経の血流を良くする内服薬を使用します。痛みがひどい場合には神経ブロックの注射を行うこともあります。神経の炎症が治まり、薬を止めても痛くなくなったという例は時々ありますが、保存療法では根本原因が治る(狭窄している箇所が元に戻る)ことはないので、基本的に内服薬はずっと続ける必要があります。それに抵抗のある方や、内服薬では痛みが改善しない方は、手術を検討します。

Q 腰部脊柱管狭窄症の手術法は?

全身麻酔で背部から神経の通り道を広げる「除圧術」が一般的です。背骨の変形まで治す必要がある場合や背骨がぐらぐらになっている場合は、「固定術」も行います。術後は、痛みに関しては比較的早くとれ、筋力低下がある人もリハビリで改善に向かいます。ただ、一度圧迫されて傷ついた神経は回復しにくいため、しびれは残りやすい傾向にあります。「固定術」を行った場合は、長期的にみると固定した上下に別の症状が出てくる可能性もあります。現在、数は少ないですが、局所麻酔下で全内視鏡手術を行える病院もあります。8mmの傷で手術ができ、筋肉を切らずに行うため、「最小侵襲脊椎手術」と呼ばれています。腰椎椎間板ヘルニア・狭窄症の手術が可能で、アスリートの方や全身麻酔が心配な高齢の方、基礎疾患のある方などには最適な手術法だといえます。

●坐骨神経痛の原因になる主な病気

 

 

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