【教えて!沿線のお医者さん!】大人も発症する!?あせもはどうしてできるの?(神戸大学+阪神電車)

汗を多量にかくと発症する「あせも」。乳幼児や子どもに多い印象がありますが、猛暑日が続く近年では、大人が発症するケースも増加しているようです。今夏も暑い日が続くとの予想が出ています。あせもができる原因や対処法など、神戸大学医学部附属病院の小野竜輔先生のお話を参考に、しっかり対策をしましょう。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年8月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院
皮膚科 小野 竜輔先生
専門は光線過性疾患、色素性乾皮症。神戸大学皮膚科では、汗をかかない、またはかきにくくなる無汗症や乏汗症の診断、検査、治療、研究を行っている。
『汗は、細菌やウイルスから肌を守り、保湿効果もあるので、あせもを予防しつつ発汗することが大切です。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q どうしてあせもができるの?

汗は汗腺(かんせん)という器官で作られ、汗管(かんかん)を通って皮膚の表面に排出されます。しかし一度に多量の汗をかくと、汗管が詰まってしまうことがあり、あせもができます。正式名称は汗疹(かんしん)といい、汗管の詰まる場所が皮膚表面に近い順に、「水晶様(すいしょうよう)汗疹」、「紅色(こうしょく)汗疹」、「深在性(しんざいせい)汗疹」と大きく分けて3つに分類されます。

●あせも(汗疹)の種類

Q あせもの治療法は?

水晶様汗疹の場合は、そのまま様子を見ても問題はありません。紅色汗疹は、炎症を起こしている状態なので、弱めのステロイド外用薬を塗布したほうが速やかに治癒します。ステロイド外用薬は、べたつきのある軟膏タイプよりもクリームタイプが適しています。ドラッグストアで購入できますが、とびひ(患部を触った手を介して他の箇所にも症状が広がる)やヘルペス(痛みを伴う水ぶくれができる)などの感染性皮膚疾患に塗ると悪化する場合がありますので、判断が難しい場合は皮膚科の受診をおすすめします。

Q 悪化するとどうなるの?

水晶様汗疹が悪化することはあまりありませんが、紅色汗疹は痒みを伴うため、掻きむしるなどすると、そこから細菌に感染してとびひになったり、膿ができたりすることがあります(膿胞性(のうほうせい)汗疹)。あせもが広範囲に発生した場合は、高体温や熱中症にも注意が必要です。なぜなら、汗は、蒸発するときに体内の熱を奪って体温を下げる働きがありますが、あせもができている部分は、汗管が詰まり発汗しないからです。
また、汗の塩分や水分で角質がふやけると、皮膚表面で外敵の侵入を防いでいるバリア機能が低下し、湿疹を発症することがあります(汗かぶれ)。

Q あせもができやすい人や状況、部位は?

汗腺の数は大人も子どもも同じなので、体が小さくて単位面積あたりの汗腺数が多い子どもは、その分発汗量も多く、あせもができやすいといえます。特に新生児期は汗腺が未発達なので、汗管内で詰まりやすく、自身で対処することもできないため、あせもができる頻度が高い傾向にあります。そして、あせもができやすいのは夏季が多いですが、乳幼児の場合は春先で急に暖かくなった時や、発熱時、暖房のよく効いた屋内へ移動した際に服装の調節が追いつかないような場合に発症することがあります。あせもができやすい部位は、主に肘や膝の裏、体幹です。新生児や乳児の場合は、通気性の悪い厚手の衣服やおむつで覆われる部位、寝返りがうてない時期に通気性が悪くなる背中にもできやすいです。また、大人でも高温の職場環境で働いている方に発症することがあります。

Q あせもと似た疾患はある?

あせもと同じように皮膚に発疹(かゆみ、水疱(すいほう)、吹き出物など)が現れるものでは、ニキビ、蕁麻疹(じんましん)、帯状疱疹(たいじょうほうしん)があります。それぞれ特徴や原因は違いますが、ほかの皮膚疾患も含め、見分けるのが難しいことが多いので、異変があれば皮膚科で診てもらいましょう。

●ニキビ
皮脂が分泌される毛穴の表面が詰まることで、中に過剰な皮脂が充満。皮脂を栄養とするアクネ菌が過剰に繁殖して炎症を起こす。

●蕁麻疹
主にアレルギー反応でヒスタミンという物質が分泌されることにより、血管が膨らんで成分が漏れ出し、その部分の皮膚が盛り上がり、かゆみが生じる。

●帯状疱疹
幼少期にかかった水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが原因。長年神経の中に潜んでいるが、加齢による免疫力の低下などで活性化して皮膚に移動し、帯状に水ぶくれや痛みを発症。

Q あせもの予防法を教えて!

温熱環境を避けることが一番ですが、避けられない場合は、皮膚温の上昇を防ぎ、角質がふやけないようにすることが重要です。発汗したらすばやく蒸発させ、濡れた衣類を長期間着用しないようにしてください。温熱環境で作業したり、長時間運動したりする場合は、通気性がよく速乾性のある素材でできた衣類の着用が適しています。最近普及している冷却ファンのついた作業着なども、あせもの予防に役立つと思います。乳幼児の場合は、環境の温度から判断して服装を調整するようにしてください。室内の場合は温度だけでなく、湿度を下げることも効果的です。

 

 

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