【教えて!沿線のお医者さん!】抜いたほうがいいの!? 親知らずについて教えて!(神戸大学+阪神電車)

“親知らず”は早期に抜歯したほうがよい、という声を耳にしますが、「痛くないから大丈夫」「生えてこないから問題ない」と、そのままにしている人も多いようです。親知らずは抜歯したほうがよいのでしょうか。神戸大学医学部附属病院の明石昌也先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 歯科口腔外科
診療科長 明石 昌也先生
顎口腔(がくこうくう)の腫瘍や白板症(はくばんしょう)、顎変形症、顎骨壊死(がっこつえし)などの治療に取り組む。親知らずの難しい抜歯手術経験も豊富。
『抜歯したほうがいい親知らずがある方は、なるべく早く処置するようにしてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 親知らずとは?



人間の歯は、全部で32本(上下左右に8本ずつ)あり、そのうち親知らずは、前歯から数えて8番目の、最も後ろ(奥)にある歯のことを指します。正式には第三大臼歯(大臼歯とは後方にある奥歯3本のことで、奥から第三、第二、第一と数える)といい、智歯ともいいます。生え始める年齢は、永久歯(大人の歯)の中で最も遅く、あごが成長しきった18~23歳頃といわれています。

Q 親知らずが生えていないのに痛いのは?

おそらく、歯肉が炎症を起こしていることが原因です。あごの発達が不十分な人は、親知らずが生えてくるためのスペースがなく、歯肉やあごの骨の中に埋まっていることがあります(埋伏歯(まいふくし))。目で確認できないので生えていないように思いますが、実際は生えようとしても歯肉を突き破れず、歯肉の一部が膨らんで変形していることも。隣の歯との間に溝ができるなど、清掃するのが難しい状態になると、汚れがたまって細菌に感染し、炎症を起こします。ただ単に、生えてくる時に歯肉を押すので物理的に痛いだけという場合もありますが、自身で判断せず、歯科医を受診してください。

Q 生えたら抜いたほうがいいの?

親知らずは、すべて抜歯したほうがいいというわけではありません。上下左右とも、まっすぐに生えていて、歯ブラシでしっかり清掃でき、噛み合わせも問題がない状態であれば、その必要はありません。しかし、傾いて生えていたり、一部分だけ露出していたりすると、歯ブラシで清掃することが難しく、汚れがたまりやすくなります。そうなると、むし歯や炎症のリスクが高くなるので、早めに抜歯したほうがいいでしょう。親知らずが完全に歯肉に埋まっている場合は、基本的に抜歯の必要はありません。ただ、歯の周囲にある軟部組織(歯嚢(しのう))に刺激が加わって、うみがたまった袋(嚢胞(のうほう))ができることがあり、抜歯をおすすめするケースもあります。また、歯並びに影響するので抜歯が必要だという考えや、生え方に関わらず歯列矯正治療のために抜歯することもあります。いずれの場合も、検診や歯のクリーニングで歯科医を受診した際に、レントゲンを撮って、親知らずの生え方、むし歯、歯周炎になるリスクを調べたうえで、抜歯するべきか医師に判断してもらってください。親知らずを支えるあごの骨の周囲には、歯のクッションのような膜(歯根膜(しこんまく))があって、年齢を重ねるほど弾力を失い、抜歯する時に負担がかかりやすくなります。抜歯は、一般の歯科医院で行うこともありますが、難しい症例の場合、口腔外科のある医療機関を紹介されることが多いです。

Q どのように抜歯するの?

抜歯しなければならない親知らずは、ほとんどが傾いて生えていたり、歯肉に一部が埋まったりしていて、全体が出ていません。そのため、まずは歯肉の一部を切開して剥離(はくり)します。それでも全体が現れず、骨に埋まっている場合は、骨の一部を削ります。横向きに生えている歯は、一度に抜歯することが困難なため、歯の頭(歯冠(しかん))と根っこ(歯根(しこん))の間に切り目を入れて分割し、歯冠を取り出します。次に、残った歯根を取り出すのですが、親知らずの歯根は2~3本あるので、それぞれの間に切り目を入れてから、1本ずつ抜き取ります。抜きにくい場合は、周囲の骨を削ります。奥のほうに埋まっているほど骨が重なっているので、歯の全体が見えるまで骨を削る必要がありますが、抜歯後に骨も歯肉も再生します。手術は通常、局部麻酔を1~2本打って行いますが、難しい手術では、鎮静作用のある静脈注射や全身麻酔を使用することもあります。

Q 抜歯の後遺症はある?

抜歯の方法にもよりますが、通常は1週間程度、痛みや腫れが続きます。このほか、さまざまな偶発症(偶然に起こる症状)が起こることがあります(※下記参照)。回避できるように、レントゲンやCTなどで事前に精密な検査を行うので、いずれも発生する確率は1~5%と、とても低いです。手術前に丁寧に説明してもらえる医療機関を選ぶと安心です。

●親知らずの抜歯時に考えられる主な後遺症
<ドライソケット>
抜歯した後に血餅(けっぺい(血液の塊。傷跡をふさいで守る効果がある))ができにくい状態になり、1週間後から痛みが発生し、治るまでに1~2週間かかる。

<神経麻痺>
下の親知らずの歯根近くに通っている下顎(かがく)神経に、手術中に器具が触れてしまったり、手術後の腫れで圧力が加わったりすることで、麻酔を打った時のように痺れた感覚が残る。見た目では麻痺は分からず、大半は3~6か月で治る。

<口腔上顎洞瘻孔(こうくうじょうがくどうろうこう)>
上の親知らずの抜歯の際、鼻の左右にある空洞(上顎洞)につながり、穴が開いた状態になる。うがいをすると鼻から水が出ることがあるが、安静にしていれば治る。

<皮下気腫>
手術で用いる切削器具(エアータービン)から発生した空気が、頬や首の皮膚の中に入り込む。まれに細菌感染を起こすことがあるが、抗菌薬を投与すれば大半は治る。

 

 

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