女性の健康課題をテクノロジーで解決する
「フェムテック」とは? 日本市場をリードするfermataさんに聞いてみた

女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指す「フェムテック」。ここ数年で急速に市場が拡大し、2025年には日本で約2兆円※もの経済効果を及ぼすと言われている注目の分野だ。(※経産省からの参照)

今回お話を伺ったのは、日本においてフェムテック業界をリードする企業・fermata(フェルマータ)の共同創業者である中村寛子さん。フェムテックとは何か、fermataが目指すものは何か、その思いを話してもらった。

女性が抱える“モヤモヤ”を減らしたい。フェムテック業界に参入した理由

――フェムテックとは、そもそもどういったものなのでしょうか?

“femtech(フェムテック)”は「女性」を示す“female”と「技術」を示す“technology”を組み合わせた造語です。2012年に、ドイツ・ベルリンに暮らす一人の女性が月経管理アプリを作ったことをきっかけに誕生しました。バイク乗りだった彼女は、自身がバイクに乗る日と月経日が被らないように、と自身のためにアプリを作ったのですが、それが周囲の女性に評判となり、会社を立ち上げることに。ただ「月経」「経血」というと、投資家には全く響かず、話も聞いてもらえなかったそうなんです。そこで、投資家に対してアピールするための方法として「フェムテック」という言葉を生み出したと言われています。

※2020年時点の日本の市場予測(fermata調べ)

――中村さんはどうしてフェムテック業界に参入しようと思ったのですか?

現在経営している会社・fermataは、2019年に、元々友人であったAminaと共に立ち上げました。それぞれ職歴やバックグラウンドは全く異なりますが、共通していたのは、何かしら自分の体や心に対してモヤモヤを抱えながら働いていたということ。私は、月経痛が酷いことに長年悩みながら体に鞭を打って働いていました。そうした経験もあることから、はじめは女性ホルモンの検査キットを作ろうと考えていたのです。ただ、いざ投資家を回って説明してみると、興味を持ってくれる方は限られていました。まさに2012年にベルリンで月経管理アプリを作った彼女と同じ状況です。

そこで、打開策を見出そうと、まず世界に存在するフェムテック製品・サービスを洗い出してみました。すると、その9割以上が日本に入ってきていないことがわかりました。つまり、日本にはフェムテック製品はおろか、そもそも市場が可視化されていない、という状況だったのです。投資家は、市場がないところに投資はしません。私たちがまず始めにすべきことは、製品を作ることではなく、日本でフェムテック市場を作ることだ、と確信したのです。そこでfermataでは、まず国内外のフェムテック製品・サービスを広めるプラットフォームを作ることから始めました。

※fermata社のビジョン

ただの商売で終わりたくない。目指すのは、女性がより豊かに健康に生きられる社会

――fermataでは、具体的にどのようなことをしているのですか?

国内外から様々な企業のフェムテック製品をセレクトして販売するECサイトを運営したり、フェムテック業界へ参入する企業のサポートを行ったりしています。ただ、私たちはこのビジネスを、ただ商品を売るだけの事業だと捉えているわけではありません。というのも、フェムテックは、女性の心身にまつわるタブーを変容するムーブメントだと考えているからです。

fermataが目指すのは、誰もが自分の体のオーナーシップ(所有権)を持つことができる社会です。例えば最近では、月経時に使用するアイテムとして紙ナプキンやタンポンに加えて、吸水ショーツや月経カップなどの製品が登場してきました。これまで、生理といえば紙ナプキンを使うしかないと思い込んでいた人にとっては、いくつもの選択肢から自分で選び取るというステップがあることが、自分の体に対して意思を持つこと、ひいては生きやすさにつながると思うのです。

――選択肢が増える、ということがポイントなのですね。

はい。逆に、それまで当たり前だと思い込んでいたことでも、新たな選択肢の登場によって「実は不快に思っていたんだ」と気づくこともあるはず。自分の体について考える・気づくようになるというステップは、生きやすくなるための必要な一歩です。だからこそ私たちは、できるだけ多くの安全な選択肢をご提供したい。そのために慎重に丁寧に、取り扱うプロダクトを選抜しています。

最近では市場の広がりから「フェムテックって、儲かるの?」とよく聞かれるんです。でも、実際、今の志あるプレイヤーは利益をギリギリまで削ってでも新しい価値観を消費者に届けようとしています。ムーブメントの本質を見ず、目先の利益だけを追うプレイヤーはそのうち淘汰されていくと思います。一番大切なのは、これまでタブー視されてきた女性の健康課題に対する固定観念をとっぱらい、女性がより豊かに健康に生きられるようになること。

7月1日から阪急うめだ本店で開催中の催事「rooms JOURNEY 01」では、私たちfermataで取り扱っている製品の一部を実際に手にとってみていただけます。えっと驚くアイテムもあるはず。新たな選択肢を、ぜひ覗いてみていただきたいですね。

お知らせ

7月1日(木)より大阪・阪急うめだ本店 9階にて開催されている、
rooms JOURNEY NEW STAND TOKYO&fermataとして出店されています!
NEW STAND TOKYO初の関西エリアでの出店です。この機会にぜひお立ち寄りください。

イベント名
Rooms JOURNEY 01 – みんなと一緒に描く「ちがう地図。」
会期
2021年7月1日(木)~7月5日(月)
時間
10:00~20:00(最終日は午後6時終了)
場所
阪急うめだ本店 9階 祝祭広場/催場/阪急うめだギャラリー  >

次回以降、2回にわたり、注目のフェムテック製品について詳しくお話しいただきます。お楽しみに!

注釈参照元:令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に 与える効果と課題に関する調査報告
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf