【教えて!沿線のお医者さん!】自分の口臭が気になる!どうすればいい?(兵庫医科大学+阪神電車)

コロナ禍でマスクを着用する時間が多くなり、「自分の口臭が気になる」と感じる人が多いようです。日本に訪れた外国人が「日本人の口臭がひどいと感じる」と回答した、というアンケート結果もあります。実際のところはどうなのでしょうか。兵庫医科大学の岸本裕充先生に、口臭について詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年5月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>


兵庫医科大学 歯科口腔外科学
主任教授 岸本 裕充(ひろみつ)先生
口のがんや顎骨壊死(がっこつえし)、インプラント治療などの診断や難しい手術に取り組む。著書に「成果の上がる口腔ケア」(医学書院)など多数。
「むし歯や歯周病予防の歯磨きは、口臭予防にもつながります。睡眠中は唾液が少なくなるので、寝る前は特に念入りに磨くようにしましょう。」

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 口臭の原因を教えて!

病的な口臭の原因はさまざまですが、圧倒的に多いのは、むし歯や歯周病です(※下「口臭の主な原因」参照)。むし歯は、細菌が糖を分解して排泄した酸によって歯に穴があく病気。あいた穴に、細菌や食べかすがたまり、ニオイを放ちます。歯周病は、歯を支えている骨が溶けてくる病気。歯と歯肉の間に隙間(歯周ポケット)ができ、そこに歯周病菌が繁殖してニオイを放ちます。むし歯菌と歯周病菌は別の細菌で、ニオイも異なるため、歯科医はどちらかの病気であることが分かる場合もあります。そのほか、口の中がかわくと、口臭の原因になりやすいです。

●口臭の主な原因
<生理的な原因(病気ではない原因)>
飲食物(ニンニク、アルコールなど)、喫煙、年齢(思春期口臭、老人性口臭)、モーニングブレス(起床時口臭)、ハンガーブレス(空腹時口臭)などの口腔乾燥

<病気が関係する原因>
口の中:むし歯、歯周病、歯垢、舌苔(ぜったい)の付着、壊死性口内炎、顎骨壊死(えし)、口腔がんなど
口以外:副鼻腔炎、扁桃炎、糖尿病(ケトン臭)、肝硬変(アセトン臭)、肺膿瘍(はいのうよう)、遺伝性疾患(魚臭症(ぎょしゅうしょう)など)など

Q 口の中がかわくと口臭がするのはなぜ?

1日に約1ℓが分泌される唾液には自浄作用があり、口の中の食べかすを洗い流して細菌の増殖を抑える効果があります。しかし、加齢、更年期や思春期などによるホルモンバランスの変化、糖尿病やシェーグレン症候群※などの病気により、唾液の分泌が減ることも。徐々に減っていくと、口がかわいていることに、本人は気づきにくいことがあります。また、唾液は口を動かすと出やすくなるため、寝ている時や食べていない時には唾液の分泌が減り、起床時や空腹時に口臭が強くなる傾向があります(※上「口臭の主な原因」参照)。ただし、これは生理的なもので、病気ではありません。
※シェーグレン症候群:唾液腺、涙腺が降害され、口と目が乾燥する自己免疫疾患

Q 日本人の口臭がひどいのは本当?

日本人だから特に口臭が強いわけではないです。他国と比べて、日本は、保険で安く歯の治療が受けられます。そのため、「痛くなれば歯医者に」という考えからか、むし歯や歯周病が放置され、普段のケアを気にしない人が多いのかもしれません。一方、海外では、治療費が高かったり、歯並びの良さが社会的評価につながったりするために、ケアの習慣がしっかりしている国が多い印象があります。これらの背景から、外国の方は、日本人の口臭に敏感なのかもしれません。

Q 口臭を予防するには?


むし歯や歯周病を原因とする口臭は、歯科での治療と、正しい歯磨きで予防できます。歯周病菌は空気を嫌う菌(嫌気性菌(げんきせいきん))ですので、歯周ポケットの入り口が蓋をされて空気が入らなくなると、繁殖しやすくなります。歯周ポケットの中に歯ブラシの毛先が深く入るコマーシャルがありますが、実際には難しいです。歯間ブラシやフロスなども併用して、歯と歯肉の境目や、歯と歯の間の歯周ポケットの入り口を開放するイメージを持つといいでしょう。歯周病菌は、急に繁殖する菌ではないので、歯間ブラシやフロスを使って念入りに磨くのは1~2日に1回程度で、それ以外は歯ブラシだけでもOK。歯並びや歯の状態で、正しい磨き方や使用するブラシの種類・サイズなどが変わってくるので、歯科医院で正しい磨き方を教えてもらってください。また、ニオイの原因となる揮発性硫黄化合物を抑える効果がある、亜鉛成分が入った洗口液やスプレーが販売されていますので、日々のケアにお使いください。

Q 舌磨きは口臭予防に効果的?

舌をこすり過ぎることはおすすめしません。舌の表面はカーペットのように細かい突起があって、そこに汚れがついて口臭の原因になることはあります。しかし、普通に食事をしていれば、舌に汚れがしつこく残ってしまうことはありません。むしろ舌をこすり過ぎて傷をつけてしまうと、細菌がつきやすくなります。気になる時は、上顎の前歯の後ろの粘膜が少しデコボコした部分に舌をこすりつけたり、柔らかいガーゼや不織布で数回こする程度で充分です。

Q 口臭が気になる時はどうすればいい?

歯科医院で「むし歯や歯周病がなくお手入れもできている」と言われたら、人に不快感を与えるような口臭はないと考えて良いでしょう。また、「仮性口臭症」といって、実際には口臭が認められないのに口臭をとても気にしてしまう方がいます。そのような方は、「口臭外来」がある医療機関などで口臭を客観的に測定する機器を設置しているところがあるので、受診してみるのもいいでしょう。客観的な検査結果が安心につながるかもしれません。
(注)兵庫医科大学病院に「口臭外来」はありません。

 

 

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