【教えて!沿線のお医者さん!】咳が止まらない!どんな病気が考えられる?(神戸大学+阪神電車)

咳が出始めたら真っ先に疑うのは風邪ですが、実は、咳が出る病気は他にもたくさんあります。なかなか咳が止まらない場合は、もしかしたら重大な病気にかかっている可能性も考えられます。そこで、神戸大学医学部附属病院の西村善博先生に、どんな病気が考えられるのか、詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院
教授 西村 善博先生
呼吸器内科学分野を専門とする。呼吸器内科・外科が連携して治療にあたる呼吸器センターのセンター長も務める。
『咳が出る時にマスクがない場合は、手やハンカチより、ティッシュなどの捨てられるもので口を覆うのがおすすめです。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 咳はどうして出るの?

咳は、気道(鼻・口から肺に至るまでの空気の通り道)に入ってきた異物(細菌・ウイルス・ほこりなど)を体外に吐き出そうとする防御反応です。反射で起こるので、咳が出たことがないという人は一人もいないはずです。また、気道にたまった痰(たん)を吐き出す生理的な役割もあります。痰は、白血球がウイルスなどと戦ったあとの残骸や侵入した異物を、気道の粘液が絡め取ったもの。そのため痰を伴う咳が続く時には、肺や気道に何かしらの炎症が起きていることが考えられます。問題は、痰を伴わない、または痰が出たとしても唾のような薄い痰だけが出る咳の場合です。原因を特定しにくく、重大な病気が隠れている可能性があります。

Q 咳が出る代表的な病気を教えて!

咳が出る病気は、非常に様々です。医学的には、3週間以内に治まる咳を急性咳嗽(がいそう)、3~8週間続く咳を遷延(せんえん)性咳嗽、8週間以上続くものを慢性咳嗽と分類します。急性咳嗽の多くは、風邪や肺炎などの感染症によるものがほとんど。慢性咳嗽の原因で代表的なものは、気管支喘息(ぜんそく)、咳喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、間質性肺炎(※詳細は、下表を参照)。そのほか、肺がんや逆流性食道炎でも咳の症状が出ることがあります。

Q どんな咳なら医療機関を受診するべき?

咳の特徴だけで病気を見分けるのは非常に難しいです。咳は、一般内科に外来で訪れる患者さんのうち1、2位を争うほど多い症状。原因も非常に多いため、すべての患者さんに対して、初診から精密な検査をすることは困難です。問診などで考えられる原因を抑える薬を服用しながら様子を見て、改善しなければレントゲンやCT検査を行うなど、段階的に診察を進めて診断するケースが多いです。一度受診しても咳が止まらない場合は、その旨を医師に相談してから、次の段階に進むようにしてください。また、咳の他に、血痰(けったん)が出る、発熱がある、呼吸困難があるなど、他の症状を伴う場合や、周りに同じような症状の方がいる場合、基礎疾患をお持ちの方で咳が出るようになった方は、早めに受診してください。そうでない場合でも、徐々に咳がひどくなって、2週間以上一定の強さや回数の咳が続く時は必ず受診してください。

Q 咳を止める方法はある?

咳は発作的に出るものなので、止めるのはなかなか難しいです。気温差や湿度差、香水など香りが強いものが刺激となって咳が出やすくなりますので、そういったものをできるだけ避けるようにしてください。また、忘れてはならないのが、咳をすることで疎外感を感じるなど、社会的に困っている慢性咳嗽の方がたくさんいらっしゃることです。コロナ禍の今はどうしても敏感になりがちですが、労わる気持ちを持って接していただければと思います。

●咳が長引く代表的な疾患
・肺炎
細菌やウイルスに感染して肺に炎症を起こす病気。症状は、咳、痰、発熱。高齢の方なら、食欲不振や倦怠感だけの場合もある。新型コロナウイルス感染症による肺炎の場合は、嗅覚・味覚障害が併発することも。治療は、症状を抑える対症療法と、感染した細菌やウイルスの増殖を抑える抗生物質、抗ウイルス薬の使用が主体。

・気管支喘息・咳喘息
喘息とは、気道にアレルギー性の炎症が続く病気で、長びく咳の最も多い原因。気管支喘息は、炎症で敏感になった気道が、ささいな刺激で狭くなって呼吸困難になり、激しい咳や痰と、呼気時に「ひゅーひゅー」と音(喘鳴(ぜんめい))が鳴る発作を何度も繰り返す。夜間や早朝、一定の季節だけ悪化するケースが多い。咳喘息は、喘鳴や呼吸困難を伴わない喘息で、痰が出ない咳の発作だけが続き、適切に対応しないと5年で約3分の1の人が気管支喘息に進行するといわれる。気管支喘息・咳喘息ともに画像検査では分からないため、気道を広げる気管支拡張薬を服用し、効果が見られれば喘息と診断する。治療は、気管支の炎症を抑える吸入ステロイド薬を使用する。

・COPD
タバコの煙を長期間吸い続けたことで気道に炎症が起き、肺機能が低下する病気。受動喫煙でも発症する。咳・痰の症状もみられるが、主な症状は息切れ。早期に発見し、禁煙に取り組むことが大切。一度かかると完治が難しく、気管支拡張薬を用いて症状を改善させる治療を行う。

・肺結核
結核菌という細菌に感染する病気で、咳や痰(ときに血痰)、発熱(主に微熱)が長い期間続く。結核患者数は減少傾向にあるが、それでも昨年は約1万5,000人が発症し、2,000人以上が命を落としている(大阪府はワースト1位、兵庫県は3位)。早い段階で適切な治療を行えばほとんどの人が改善する。空気感染するため、周りに広げないためにも、早期発見・治療が大切。

・間質(かんしつ)性肺炎
肺胞(吸い込んだ空気が運ばれる肺の中にある小さな袋)の周囲(間質)が硬くなっていく病気で、痰を伴わない咳が長引き、息切れが起こる。原因が特定できない場合、「特発性間質性肺炎」という指定難病に分類される。完治させる薬はまだないのが現状で、最近、症状の進行を抑える薬が保険適用になった。原因が分かる場合(膠原(こうげん)病、薬剤の副作用、放射線治療、環境など)は、原因に対する治療を行うことで改善することが多い。

 

 

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