【教えて!沿線のお医者さん!】できてしまった胆石(たんせき)は、そのままにしていいの?(神戸大学+阪神電車)

「検診を受けたら胆石が見つかった」「胆石が痛くて救急搬送された」という話を耳にしたことはありませんか?検診を受けるまで気づかないこともある一方で、命に関わる原因にもなる胆石。できてしまったらどうすればいいのでしょうか。神戸大学医学部附属病院の津川大介先生に、症状や治療法を含め詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 肝胆膵外科
特定助教 津川 大介先生
神戸市須磨区出身。肝臓がんやすい臓がんの治療に多く携わる。テニスとドライブが趣味で、大の阪神タイガースファン。
『肝臓、すい臓、胆のうの病気を防ぐには、検査を定期的に受けて早期発見を心がけてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 胆石って何?

胆石とは、肝臓で作られる消化液(胆汁(たんじゅう))が十二指腸に流れるまでの通り道(胆道(たんどう))にできる結石のことで、胆道に結石ができる病態を総称して胆石症といいます。胆石症は、結石ができる場所によって3種類に分類され、胆のうにできるものを「胆のう結石」、肝臓の中にできるものを「肝内結石」、胆汁が通る管(総胆管)にできるものを「総胆管結石」と呼んでいます。胆石は、日本人の5~10%が持っていると言われ、大部分が胆のう結石であるため、胆石と言うと、胆のう結石を指すことが一般的です。

Q 胆石ができる原因は?

胆石には、胆汁の成分のひとつであるコレステロールが固まってできる「コレステロール石」と、何らかの細菌感染によってできる「色素石」の2種類があり、どちらもできる原因はよく分かっていません。コレステロール石の方が多く、太った人、女性、40歳代の人、白人、多産婦にできやすく、血中コレステロール値の高い方や胆石症のご家族がいる方も、胆石ができやすいと言われています。

Q 胆石症の症状は?

約20%の方が無症状です。自覚症状がある場合で典型的なのは「胆石発作」といって、食後に生じる右上腹部痛や右肩に放散する痛み。さらに、胆のう結石の場合には、胆石が原因で胆のうや総胆管に炎症を起こし、症状が悪化することがあります。胆のうの出口あたりに胆石が詰まって胆のうが炎症を起こすと(急性胆のう炎)、激痛、高熱、嘔吐などを生じ、命に関わることがあるため、発症したら救急受診が必要になります。結石が胆のうから落下し、十二指腸まで行かずに途中の総胆管で詰まって炎症が起きると(急性胆管炎)、右上腹部痛、発熱に加え、黄疸(おうだん)も見られるのが特徴です。

Q 無症状で胆石が見つかったらどうするの?

無症状なら基本的に治療の必要はありません。無症状の胆石症の方が胆石発作を起こす確率は年間2~3%程度です。そのまま様子を見て胆石発作が起きた際に、医療機関を受診して手術を受けるのが望ましいです。胆石発作は発症しても、一旦、症状が治まるため、受診しない方がいらっしゃいます。しかし、胆石発作が一度起きてしまうと再発をくり返し、急性胆のう炎を発症するリスクが高くなります。急性胆のう炎になってしまうとすぐに手術ができないこともあるため、胆石発作を疑った段階で受診していただくのが、体への負担が一番少ないと思います。

Q どんな手術をするの?

胆のう結石の場合は、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使って胆のうを摘出する手術を選択する場合が多いです。手術は1~2時間程度、入院は1週間程度で済みます。腹腔鏡は、おへそのシワに沿って皮膚を切って挿入しますので、傷跡もあまり目立ちません。急性胆のう炎を起こしてしまった場合は、一旦、炎症を抑える処置をとり、治まってから腹腔鏡で摘出手術を行いますが、胆のうの状態によって開腹手術になることもあります。急性胆管炎の場合は、胃カメラでまず総胆管内の胆石を取り除き、後日、腹腔鏡で胆のうの摘出手術を行います。

Q 胆のうを摘出しても生活に支障はないの?

胆のうは、肝臓で作られた胆汁を濃縮して蓄積し、食べ物が十二指腸に届いた時に、胆汁を押し出すポンプのような役割をしています。しかし、多くの胆石症の患者さんは手術が必要な時点で、繰り返す炎症のために胆のうの機能は失われているので、摘出してしまっても生活に支障はありません。ただ、胆のうを摘出しても、まだ症状を感じる「胆のう摘出後症候群」になる方が5~40%いるという報告がありますが、その原因は分かっていません。

Q 無症状の人が急性胆のう炎になる確率は?

生涯で約4%だと言われています。発症するかどうかは検査の段階では分かりづらく、予防法も分かっていません。胆石発作を起こしたことがないのに突然発症する例もあります。そのため、無症状でも心配なので胆のうを摘出したいという方もおられるでしょう。また、基礎疾患があって治療中の方は、胆のう炎を起こした時に大事に至るリスクが考えられるので、胆のうを摘出しておいた方がいい場合もあります。いずれの場合もかかりつけ医とよく相談してください。

Q 胆石を予防するには?

コレステロールが関係しているのではないかと言われているので、飲酒、太り過ぎ、高脂肪食の取り過ぎに注意してください。大切なことは定期検査を受けること。無症状の方も胆石を持っていることが分かれば、痛みがあった際にすぐに受診でき、処置も簡単に済みます。胆石だけでなく、肝臓やすい臓、胆のうの病気は、自覚症状が現れにくく、肝臓がんやすい臓がんは、症状があってから受診すると手遅れになるケースがほとんどです。胆石は腹部超音波検査(腹部エコー)で簡単に見つかりますが、肝臓、胆のうの病気を見つけるにはCT検査が必要です。併せて定期的に行うようにしてください。

 

 

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