声の表情を豊かに
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わたしは、感情や物事を伝えるということにおいて、“声” というのは、とても大切な役割を担っていると思います。
それはボーカリストだからというのはもちろんなのですが、
「ありがとう」とか「ご馳走さま」とか、そういう日常の中にある些細な気持ちを “声にだして伝える” そんな当たり前のことが素敵だと感じるからです。
だけどこの冬、在宅ワーク中心で、オンライン会議の機会が増えたり、
外ではマスクの着用が義務付けられていたりすると、その気持ちの部分が伝わりづらくなっているように感じます
やっぱり、ハツラツとした元気な声は、周りの人やその場の空気を明るくするもの。
前回は、“顔の表情” についてお話しをしましたが、
今回は、マスクをしていても、画面越しでも、伝えたいことが伝わる “声の表情”
について、ボーカリストならではの喉のケア方法を交えながら、お話していこうと思います。
少しでもみなさんの日常に役立てば嬉しいです!
まずは、ハツラツとした元気な声を出す為に喉の健康は不可欠。
特に乾燥する冬、ボーカリストが常に意識していることは “加湿” です。ウイルス対策や、風邪予防としても大事なことですよね。
声というのは、肺から送られた空気が、喉仏の中にある声帯と呼ばれる2枚のヒダを振動させ、そこで発生した音(声帯原音)が、喉や口、鼻などで共鳴して声となります。
その振動数は、しゃべり声の場合、なんと1秒間に約200回以上も波打つように振動しているそうです。
外気がダイレクトに触れる喉は、空気が乾燥をしていると、あっと言う間に乾燥し、さらに乾燥をしたまましゃべり続けると、粘膜が硬くなり炎症が起こりやすくなってしまいます。
なので、なるべく喉を乾燥させないように、のど飴を舐めたり、小まめに水分をとるように心がけています。
飲み物でわたしのおすすめは、常温のお水。カフェインの強いものは利尿作用があって逆に水分が失われてしまうので、歌う前は紅茶やコーヒーなどはなるべく避けるようにしています。
在宅ワークでのお家カフェは、「スロートコート」というハーブティーもおすすめ!
ほのかな甘さが喉を優しくまとってくれて癒されますよ。
他にも加湿器を炊いたり、寝る時はマスクをしたりと、ありとあらゆる方法で、喉を潤わせていきます。
それでも、歌いすぎで声が掠れてしまうことも多々…。
みなさんも会議が続いたり、オンライン飲み会でしゃべりすぎて “声が掠れた” なんて事、あると思います。そんな時におすすめしたいケア方法をご紹介!
小さい頃、ジュースが入ったコップをストローでぶくぶくしてお母さんに叱られた経験ありませんか?
そのご法度とされていた経験がいまこそ役立つとき!
声帯への負担を減らしながらコンディションを整えられるので、声帯のリハビリや、実際にボーカリストの発声練習にも使用する方法です。
準備するものは、空のペットボトル、ストロー、お水の3つ。
やり方は簡単!空のペットボトルにお水を三分の1ほど入れ、そこにストローをさします。
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ストローを咥えたまま息を吐き、お水をぶくぶくとさせます。
ポイントは、吐く息の量が強くなったり、弱くなったりせず、一定になるよう気をつけ、なるべく長く吐くこと。慣れてきたら “う〜”と声も一緒に出していきましょう。なるべく低い声がいいです。
たったこれだけ。ぶくぶくという振動が声帯を優しくマッサージしてくれるので、掠れ声にはおすすめの方法です。
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さて、喉の調子が整ったらいよいよ “声の表情” 作りです!
相手に明るい印象を与える「笑声」や、相手に説明をする時の「説得力のある声」など、声にもいろんな表情があります。
画像を参考に鏡を見ながら一緒にやってみてくださいね。
声の表情作りに欠かせないのは、 “口の開き方” です。
「え」という母音と、「お」という母音をそれぞれ少しオーバーに動かし発声してみてください。
そうすると口の形はもちろん、舌の付け根(舌根)の位置にも変化があることに気づくと思います。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
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「え」の場合
口の開き方→横
舌根の位置→上にあがる
響き→鼻腔のあたりで共鳴
声質→抜けのあるクリアな声
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「お」の場合
口の開き方→縦
舌根の位置→下にさがる
響き→喉や、胸のあたりで共鳴
声質→太く重たい声
比較してみると、「え」と「お」で正反対の特徴がありますよね。
なので、同じ音程で発声しても、「え」の方が高く「お」のほうが低い音の印象になりませんか?
ということは、「え」の発声を活用し、なるべく口角をあげ、口を横に開いて喋ると、明るい印象を与えられるということ。
その時、目もしっかり開いてあげると、頬の筋肉がもちあがり、よりハリのある元気な声になります。
反対に、「お」の発声を活用し、口は縦に、胸に響かせるように喋ると、太く芯のある声になるので、説得力や貫禄のある印象を与えることができます。
初めは鏡をみてオーバーにやってみてください。だんだんと慣れてくると、自然といろんな声の表情が身についてくると思います。
こうやって、口の開け方に変化を持たせ、“響かせる位置” を工夫するだけで、ずいぶんと印象が変わるものです。
「嬉しい」や「ありがとう」という気持ちが、マスクや画面の隔たりひとつで伝わりづらくなってしまうのはもったいない!
こんな時代だからこそ、顔、そして声の “表情” を豊かにし、より密なコミュニケーションをとっていけたらいいなと思っています。
まずは、身近な大切な人へ。
ぜひ今日から試してみてくださいね。
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•ボーカル養成講師
•クリエイティブプランナー
福岡県出身。高等学校の芸能コースにて、歌、作曲、ギター、ダンスなどを学び、卒業と同時に全国デビュー。
4枚のアルバムをリリースし、コーラスや、2016年よりボイストレーナーとしての活動を開始。 音楽を通し「一緒に感情を動かす」という事を得意とし、類稀なる明るい性格で不思議と周囲の人を笑顔にする。 プロ、アマ問わず、総勢100名を超える生徒を受け持ち、“筋肉“に着目した独自のメソッドにも定評がある。