【教えて!沿線のお医者さん!】食後の胸焼け、逆流性食道炎かも!?(兵庫医科大学+阪神電車)

胸が焼けるように熱い、酸っぱいものが喉のほうまで上がってくる。そんな症状がある方は、もしかしたら逆流性食道炎かもしれません。近年、増加傾向にあり耳にすることも多い病気ですが、意外に原因などは知られていません。そこで、専門医である兵庫医科大学の三輪洋人先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 消化器内科学
主任教授 三輪(みわ) 洋人先生
逆流性食道炎をはじめとする、内視鏡を用いた消化管疾患や進行管がんなどの診断と治療をテーマに、臨床・研究活動を進める。
「胃カメラで何も見つからなくても辛い症状がある方は、専門医に相談をしてください。」

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 逆流性食道炎とは?

胃酸が胃の上部にある食道に逆流し、食道が炎症を起こす病気です。胃酸は、肉を溶かしてしまうくらいの非常に強い酸性の消化液です。胃の粘膜は胃酸に溶けない構造になっていますが、食道は皮膚と同じような構造のため、逆流した胃酸によってただれてしまうのです。

Q 原因は何?

胃と食道の境目には、下部食道括約筋(かつやくきん)という薄いリング状の筋肉があり、食べたものを食道から胃に送り込むときだけ開き、その後すぐに閉じるようになっています。逆流性食道炎の大きな原因のひとつは、この下部食道括約筋が、食べ物を通す必要がないのに開いてしまうからだと考えられます。下部食道括約筋は腹部とつながっているため、姿勢の悪さ、ベルトの締め過ぎ、妊娠、肥満の方の脂肪などで、腹部に圧力がかかると引っ張られて開きます。また、高脂質の食事を摂ったときに分泌されるコレシストキニンというホルモンが、下部食道括約筋をゆるませて開きやすくしてしまうこともわかっています。年齢などで下部食道括約筋の閉じる筋力が衰えてくるのではないかという説もありましたが、現在では、それが原因ではないという研究結果があります。

Q 逆流性食道炎になる人は多いの?

近年は特に増えており、国民の約15%が逆流性食道炎にかかっていると言われています。増加している原因のひとつに、ピロリ菌感染者の減少が考えられます。昔は、胃がんや胃潰瘍(いかいよう)の原因となるピロリ菌に感染している方が70~80%にも及んでいました。ピロリ菌は胃壁(いへき)に住み着く細菌で、胃壁から産出される胃酸を抑制し、胃全体の酸性度を弱めます。すると、胃酸が逆流したとしても、弱酸性のため、食道が炎症を起こすことはありません。ピロリ菌感染患者の減少により、胃がんや胃潰瘍の患者はかなり減りましたが、逆流性食道炎患者を増やす結果につながっているのではないかと思います。

Q どんな症状がある?

最も特徴的な症状は、胸焼けと酸っぱいものが喉のほうまで上がってくる感じ(呑酸(どんさん))です。胸焼けとは、前胸部のみぞおちの少し上あたりに燃えるように熱い感じ(灼熱感)があること。お腹が熱い、むかっとするなどの症状を胸焼けと思う人もいますが、それは逆流性食道炎の症状ではありません。これらの症状から派生して、咳が出る、喉が詰まる感じ、不眠、胃酸過多による胃のもたれなど、人によって様々な症状が起こります。下部食道括約筋の動きは、ストレスや睡眠不足などの影響でも左右されるため、日によって症状や辛さの感じ方は変わります。

Q 症状がない場合もあるって本当?

症状はないのに、胃カメラによる検診で逆流性食道炎が見つかったという例は多いです。逆に症状があっても胃カメラでは何も見つからないこともあります。逆流性食道炎の粘膜の傷の大きさと、症状の辛さは比例しません。痛みの感じ方には個人差があり、とても敏感な方もいれば、痛みを感じにくい方もいます。逆流性食道炎の症状は、QOL(生活の質)を大きく下げます。もし、胃カメラで何も見つからないと言われた場合でも、症状が週2回以上あれば、かかりつけ医に相談して治療を受けてください。症状が全くなく、炎症も小さい場合は、特に治療の必要はありませんが、ご本人が辛さに慣れているだけということも考えられます。「症状がないから様子をみていたけれど、治療を受けたらすごく楽になった」というケースもありますので、かかりつけ医とよく相談してください。炎症が粘膜ひだ上に筋状になって重なって広がり、出血や狭窄(きょうさく)を起こしているような重症の方もいますが、そういう方は症状の度合いに関わらず投薬や手術が必要です。ただ、全体的に、重症者は数パーセントで、9割以上が軽傷です。

Q どんな治療をするの?

胃酸の分泌を抑える薬を服用していただきます。胃酸を強酸から弱酸に変える働きがあり、胃酸が逆流しても炎症が起こりにくくなります。30年ほど前から同じ薬が治療に使われていましたが、近年さらに効果が高いとされている薬も登場しています。以前治療を受けて効果がなかったという方も、あきらめずに専門医に相談してみてください。

Q 逆流性食道炎を防ぐには?

肥満を防ぐこと、姿勢を正して腹部を圧迫しないこと、高脂肪の食事を控えることです。食べ物では、玉ねぎやチョコレート、お酒、柑橘系なども胃酸を多く出しますので、症状がある方は控えたほうがいいでしょう。また、胃は左上から右下にかけて位置しているので、下部食道括約筋がある胃の入り口(右上)側を上にして寝ると、胃酸が逆流しにくくなります。すなわち食後に横になるときは、左側を下にすると、逆流性食道炎が起きにくくなります。

 

 

~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」で紹介している今月の特集や駅周辺のスポット、イベント情報はWEBでもご覧いただけます。
https://www.hanshin.co.jp/area/

阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/