【教えて!沿線のお医者さん!】老眼にまつわる気になる噂 ホントのことを知りたい!(神戸大学+阪神電車)
老眼は老化現象のひとつです(医学用語で「老視」)。手元が見えにくい症状が現れてもなかなか認めたくない人も多いのでは?「近視だから老眼にならない」「老眼は治せる」「老眼鏡をかけると老眼が進む」など、老眼にまつわる様々な噂もあります。そこで、神戸大学医学部附属病院の長井隆行先生に、実際のところはどうなのか、詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年12月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
神戸大学医学部附属病院
眼科/外来医長・助教 長井 隆行先生
角膜や結膜を専門とし、角膜感染症やドライアイの治療、角膜移植などに多く携わる。
コメント『老眼だと軽視していたら、他の病気が隠れているというケースも。老眼鏡をかけても視力が改善しない方は、眼科を受診してみてください。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q 老眼だとどうなるの?
遠くがはっきりと見える状態で手元を見た時に、ピントが合わず、見えにくいと感じるようになります。それに伴い、頭痛や肩こりといった体の不調を感じる方もいらっしゃいます。
Q どうして老眼になるの?
目の中には水晶体(すいしょうたい)という、弾力性があり、厚みを変化させてピントを調節するレンズの役割をしているものがあります。平常時は薄く、遠くが見える状態になっており、近くを見る時に周囲の筋肉(毛様体筋(もうようたいきん))をぎゅっと縮ませて、水晶体を分厚くします。しかし、年齢とともに水晶体は弾力性がなくなって硬くなり、毛様体筋も衰えるため、厚みを変化させることができなくなり、近くを見ようとする力(調節力※)が失われていきます。この調節力の障害が老眼の原因です。
※ 調節力
レンズの度数の単位(D:ディオプトリー)で表す。D=1÷近点距離[m](はっきりと見える一番近い距離)で計算し、10歳の時には12D(目から8~9cmの距離でもはっきりと見える)の調節力があるが、40歳頃に4D程度、60歳には0.5D程度にまで低下する。
●近くを見るとき
Q 老眼鏡をかけると老眼は進むって本当?
老眼鏡が老眼の進行を加速させるという訳ではありません。老眼は40歳代から始まり、調節力が全くなくなる65歳頃まで徐々に進行していきます。老眼鏡をかけ始めた時には見えやすくても、数年経つと症状が進行して、同じメガネでは見えにくく感じるようになります。そのため、老眼鏡をかけると老眼が進行するように思われがちですが、かけてもかけなくても同じように進行しています。
Q 近視の人は老眼にならないって本当?
近視の人は、近くにピントが合っていて見えている状態なので、近くを見る時に水晶体を分厚くしてピントを合わせる必要がなく、調節力が衰えても気づきにくい傾向にあります。しかし、40歳代になると、近視の人も老眼が始まっていて、遠くがはっきりと見えるメガネやコンタクトを装着すると、近くが見えづらくなります。他にも、本を読む時に、目から離して読むクセがある人は、老眼になっても気づきにくいなど、症状を自覚する程度に個人差があるため、老眼にならない人がいると思われがちです。しかし、実際は老眼にならないのではなく、気づくか気づかないかであって、なりやすい人となりにくい人という区別も特にありません。
Q 遠視の人が老眼になったら?
人がモノを見る時、光は水晶体を通って屈折し、目の奥にある網膜に当たって映像化されます。この時、網膜に光の焦点が合っていればはっきりと見えます。調節力が働いていない状態の時に、網膜にぴったりと焦点が合っている人を正視、網膜よりも前に焦点が合っている人を近視、後ろに焦点が合っている人を遠視といいます。遠視の人は、遠くがよく見える人だと思われがちですが、これは、水晶体を分厚くして、網膜の後ろにあるピントを網膜にぴったり合わせるように調節することで、遠くのモノがよく見えているのです。しかし老眼になると、調節力が弱まってしまうため、遠くのモノも見えづらくなります。近くのモノは元々見えづらい状態ですので、遠近ともにピントが合わなくなります。
Q 最近耳にする「スマホ老眼」って何?
最近「スマホ老眼」という言葉をよく耳にするようになりました。スマホを見続けていると、調節力を酷使している状態になるので、その力に限界が来て機能しなくなり、ピントが合わず、かすんだり、老眼と同じような症状が出てきます。調節力の障害という点では老眼と同じ状態ですが、加齢によるものではないため、若い方でも見えにくくなります。「スマホ老眼」は一過性ですが、画面を凝視していると、まばたきの回数が減ってドライアイになる危険性もあります。スマホを見る時は、適宜休憩を入れて目をリラックスさせるようにしましょう。
Q 老眼になったらどうすればいい?
今のところ、老眼の治療法や予防法は見つかっていません。老眼の状態で頑張って見続けていても目が鍛えられることはなく、逆に目が疲れてしまいます。最初は抵抗があるかもしれませんが、見えにくさを自覚した時点で老眼鏡をかけることが、一番楽に過ごせるようになる方法です。老眼鏡のつけはずしが面倒だという方に、遠近両用のメガネやコンタクトレンズもあります。遠近両用は、一つのレンズに遠くが見える部分と近くが見える部分の両方を配置したものです。視線をずらして、それぞれの部分で見る必要があるため、慣れないという方もいらっしゃいますが、うまく使いこなせる方にはとても便利だと思います。一度試してみられてはいかがでしょうか。最近は、パソコンの画面と手元の両方が見えるように設計された近々両用や、中近両用なども開発されているので、仕事や生活の状況に応じて選択するのもいいでしょう。
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