【教えて!沿線のお医者さん!】改めて知りたい!新型コロナウイルス感染症を予防するには?(兵庫医科大学+阪神電車)
世界の大部分で感染拡大に歯止めがかからず、一向に収束する気配がない新型コロナウイルス感染症。しかし、徹底した感染症対策を講じれば予防できる感染症でもあります。そこで、兵庫医科大学の竹末芳生先生に、改めて新型コロナウイルス感染症に関する知識と感染予防対策についてお聞きしました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年9月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
「教えて!沿線のお医者さん!」のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
兵庫医科大学 感染制御学 感染制御部
主任教授 竹末 芳生先生
各種感染症の診療支援、および院内感染防止対策のほか、全国モデルになっている抗菌薬適正使用支援などに関わる。人工呼吸器やECMOを使用した新型コロナウイルス重症患者の治療にも取り組む。
●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp
Q 新型コロナウイルスとは?
王冠(コロナ)のような突起(スパイク)を持つ形状のウイルスを総称してコロナウイルスと言います。通常の風邪のウイルスや、海外で流行した死亡率の高いSARS(サーズ)、MERS(マーズ)のウイルスもコロナウイルスの仲間です。その中で、新型コロナウイルスは、新しいタイプであるため「新型」と命名されました。
Q 新型コロナウイルス感染症の特徴は?
SARSやMERSと異なる特徴は、新型コロナウイルス感染症は、無症状や軽症の方が比較的多いことと、その一方で、重症化し死亡する例も決して低くはないという二面性がある点です。SARSやMERSのウイルスは病原性が高く、感染すればすぐに重症化するので、短期間で世界的に感染が広がることはありませんでした。しかし、新型コロナウイルスは、無症状や軽症の感染者がキャリア(ウイルスの運び屋)となって、さまざまな場所に出かけることで、急速に拡大する傾向があります。重症化させる病原性を持ちながら、気づかれないように感染者数を増やしていく、非常にしたたかなウイルスと言えるでしょう。重症化しやすいのは、高齢者や合併症を有する方だと言われていますが、一定の割合で若い方も重症化しています。
Q 重症化する人がいるのはどうして?
重症化する方がいるのは、ウイルスだけの問題ではなく、サイトカインストーム※1と呼ばれる患者さん自身の過剰な生体反応が関与しているのではないかと言われています。ご自身がサイトカインストームを起こしやすい生体かどうかは、ご本人はもちろん医師でも事前に知ることはできません。つまり、誰でも重症化する可能性があるのです。また、肺だけでなく心臓にもウイルスが侵入しやすいことがわかっており、これらの合併症を持つ人では重症化しやすいと言われています。
※免疫反応を呼び起こす伝達物質(サイトカイン)が大量に放出され、制御不能な「ストーム=嵐」の状態になること。その結果、本来体を守るための免疫活動が逆に体を傷つけてしまう。
Q 感染した際の症状は?
発熱、上気道炎、咳、痰に加え、味覚・臭覚の障害や非常に強い倦怠感を伴う場合もあることが特徴です。また、発症から1週間後に急に悪化するケースがあることも注意すべき点です。検査値の面では通常、感染症を起こすと増加するはずの白血球は正常にとどまり、特にリンパ球は減少します。重症化しやすい方はDダイマー値※2やCRP値※3が上昇していることが特徴です。
※2 かなり高い値だと、静脈血栓症を発症していることが多い。
※3 C反応性蛋白のことで、炎症が起きているときに上昇する。
Q どのようにして感染するの?
感染者が会話や咳などで吐き出したウイルスを吸い込んで感染する「飛沫感染」と、感染者と直接または感染者が触れたものに接触して感染する「接触感染」です。新型コロナウイルス自体は5ミクロン以下と小さいのですが、水滴に包まれて吐き出されるので、2m以内に落下します。ただ、大声や大きな息を出し続けていると、エアロゾル(空気中に浮遊する細かい粒子)が発生する可能性が出てきます。換気の悪い密閉した空間でエアロゾルが発生すると、感染者から離れた位置にいても感染するリスクがあります。
Q 感染しないためには?
まず、接触感染を防ぐために、手洗いを徹底することです。新型コロナウイルスがテーブルや手すり、エレベーターの押しボタンなどについてしまうと、材質にもよりますが3日くらい生きると言われています。ただ、新型コロナウイルスは触っただけでは感染しません。ウイルスが付着した手で、口・鼻・耳を触ってしまうことで感染します。ですので、その前に手を洗う、または消毒すれば感染を防げます。飛沫感染を防ぐためには、マスクを着用すること、2m以上の距離(ソーシャルディスタンス)を取り、3密(密閉・密集・密接)を避けることが大切で、密閉空間にならないように換気をすることが必要になってきます。ラッシュアワーは、どうしても3密になりがちですので、朝は時間をずらして混んでいる電車を避ける、電車を降りて家や会社に着いたらすぐに手を洗うなどの対策を行ってください。
Q マスクをはずしてもいい時は?
夏は熱中症にかかる恐れがありますので、屋外で人との距離を十分取れる場合は、はずしても問題ありません。ただ、運動時は大きな呼吸をしますし、風下のほうにウイルスが飛散する可能性があります。また、プールでは折り返す場所で立ち止まっておしゃべりすることも控えてください。さらに、食事をするときはマスクをはずしますが、対面での食事を避ける、会話は最小限にする、短時間で済ますなどを心がけてください。
~ホッと!HANSHINとは~
グルメやカルチャー、エンターテインメント、観光スポットに関する情報など阪神沿線の様々な「魅力」をぎゅっと紹介する沿線情報紙。阪神電車の各駅や阪急電鉄や近鉄(奈良線)の主要駅などで無料配布しています(毎月25日発行)。
▶「ホッと!HANSHIN」で紹介している今月の特集や駅周辺のスポット、イベント情報はWEBでもご覧いただけます。
https://www.hanshin.co.jp/area/
阪神電気鉄道(株)は、阪神間において安全で質の高い医療の提供に取り組む神戸大学・兵庫医科大学と連携し、沿線住民の健康増進への貢献を通じた沿線の活性化を推進しています。2016年からは、子どもから大人までが健康や医療について楽しく学べる「HANSHIN健康メッセ」を開催しています。
▶「HANSHIN健康メッセ」WEBサイトはこちら
https://www.kenko-messe.com/