【教えて!沿線のお医者さん!】頭がかゆくてフケが出る!これって病気?(兵庫医科大学+阪神電車)

頭のかゆみやフケ、一時的なものだと思っていたら、なかなか治らない…。現在、そのような悩みを抱えている方が非常に多いようです。単なるフケだと思っていたら、実は病気が隠れている可能性も!原因は一体何なのでしょうか?また、どんな治療をすればいいのでしょうか?兵庫医科大学の井上裕香子先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年3月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 皮膚科学
助教 井上 裕香子先生
重症のアトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)患者に、新しい注射による治療を行うなど、最新医療の導入に積極的に取り組む。
『アトピー性皮膚炎や乾癬が原因でフケ・かゆみに悩まれている方には、新しい抗体医薬品も登場していますので、ご相談ください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 頭のかゆみ、フケの原因は?

頭皮にフケやかゆみが継続して発症する場合、最も可能性が高いのが「脂漏性(しろいうせい)皮膚炎」によるものです。これは、皮脂などの分泌物が増えることで、元々人間の皮膚に常在しているマラセチアという真菌(カビ)が増殖し、炎症を引き起こしてしまう病気。頭皮だけでなく、顔やワキ、背中など、皮脂の分泌が盛んな部位にも湿疹が見られることがあります。また、白癬菌(はくせんきん)に感染して起こる「頭部白癬」でもフケやかゆみを発症します。白癬菌もカビの一種ですが、人間の皮膚には常在していない菌で人やペットを介して感染します。 頭部白癬の場合、炎症が強くなると、髪の毛が抜けて再び生えてこなくなる「ケルスス禿瘡(とくそう)」を併発しやすくなります。そのほか、「アトピー性皮膚炎」や、「尋常性乾癬(じゅんじょうせいかんせん)」の落屑(らくせつ)(皮膚の表面がポロポロと剥がれ落ちる)の症状が、頭部に現れている可能性もあります。シャンプーを変えたり、美容院に行ったりした直後などに急に発症した場合は、シャンプーや毛染め液、パーマ液などにかぶれて炎症を起こしている可能性もありますが、この場合は、原因となる頭髪剤を中止することで症状が落ち着きます。

Q 病院に行った方がいい?

症状が続く場合は、原因に応じた治療を行わなければ改善しないケースが多いため、かかりつけの病院で診察を受けた方がいいでしょう。症状がどれくらい続いているか、頭皮以外の部位に症状はないか、ご本人やご家族の既往歴など、問診結果と合わせて診断します。頭部白癬の可能性がある方には、顕微鏡検査や培養検査を行います。

Q どんな治療をするの?

脂漏性皮膚炎の場合は抗真菌外用剤を処方しますが、炎症やかゆみが強い方にはステロイド外用剤を処方することもあります。症状が軽い場合は、市販もされている抗真菌成分配合のシャンプーを使用するだけで治まることもあります。頭部白癬の場合は、塗り薬ではあまり効果が見られないため、通常は内服薬を処方します。ただ、初期段階では脂漏性皮膚炎や円形性脱毛症などと区別がつきにくく、ステロイド外用剤が処方される可能性もありますが、ステロイド外用剤は、逆に症状を悪化させることが分かっています。万が一、症状が悪化した場合はすぐに使用を中止して、医師に相談してください。アトピー性皮膚炎や乾癬は、数年前までは治すことが難しいと言われていましたが、現在はとてもよく効く注射の治療があります。治療を受けるには適応条件があり、日本皮膚科学会が定める医療機関で十分な検査も必要です。まずは、かかりつけの病院に相談し、適した病院を紹介してもらってください。

Q 予防法はある?

脂漏性皮膚炎は、脂っこい食事を摂りすぎたり、ストレスの多い生活をしたりといった日常生活が原因で起こる病気です。お薬で症状が一旦治まったとしても、生活環境の改善が見られなければ再発し、いつまでも症状が続くのが特徴。常に頭皮を清潔に保ち、バランスの良い食生活を心がけてください。頭部白癬は、初期段階ではかゆみを感じないことが多く、放置していて症状が進行することも。フケが気になりだしたら、軽視せずにかかりつけの病院を受診してください。

●フケ・かゆみが起こる主な病気と治療法
・接触性皮膚炎
[主な症状と原因]シャンプーや毛染め剤、パーマ液など、頭皮に触れるものにアレルギー反応を起こしてかぶれる。

[治療法]原因となったシャンプーなどの頭髪剤の使用を中止すれば、やがて症状は治まる。

・脂漏性皮膚炎
[主な症状と原因]脂肪の過剰摂取、ストレス過多な生活などで、皮脂分泌が過剰になると、皮膚の常在菌であるマラセチアの数が増加し過ぎてしまい炎症を引き起こす。顔や体にも湿疹を発症することがある。

[治療法]抗真菌効果のある塗り薬やシャンプーの使用で、症状は一旦治まるが、原因となる生活環境の改善が見られない場合は再発し、だらだらと症状が続く可能性が。頭皮を清潔に保ち、バランスのいい食生活を心がけることが大切。

・アトピー性皮膚炎
[主な症状と原因]アレルギー疾患のひとつで、かゆみを伴う湿疹が発生する。頭部だけでなく、全身に症状が現れる可能性がある。

[治療法]かかりつけの病院で、半年以上適切な治療を受けても改善しない場合は、日本皮膚科学会が定める医療機関で注射による新しい抗体医薬品の治療が可能。

・尋常性乾癬
[主な症状と原因]頭皮の同じ部位に繰り返し分厚い皮が付着し、はがれ落ちる。体からもフケのような粉がポロポロと落ちることがある。

[治療法]乾癬の原因物質を取り除き、皮膚症状の90%以上を消失させることができる、新しい注射の治療が登場。治療は、十分な検査と経過観察が必要なため、日本皮膚科学会が定める医療機関で実施される。

・頭部白癬
[主な症状と原因]ペットや格闘技でうつる特殊な白癬菌が感染して炎症が起きる。菌が髪の毛にも付着し、脱毛しやすくなるのが特徴。初期段階ではかゆみなどの自覚症状がなく悪化させてしまうことも。

[治療法]抗真菌内服薬を服用する。治療には一定の期間を要するため、その間、周囲に感染させないように注意が必要。ステロイド外用剤を塗布してしまうと症状が悪化し、毛が生えてこなくなるケルスス禿瘡を発症することも。

 

 

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