【教えて!沿線のお医者さん!】ズキンとくるひざの痛み、これって何!?(神戸大学+阪神電車)

最近、「階段を降りる時にひざが痛い」「立ち上がった時にズキンと痛む」「正座ができなくなった」などの症状はありませんか?放っておくと悪化して歩くのが困難になる可能性もあります。そこで今回は、ひざが痛む原因や治療法、予防法に至るまで、神戸大学附属病院の髙山孝治先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年2月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学大学院医学研究科
外科系講座整形外科学
助教 医学博士 髙山 孝治先生
専門は、変形性ひざ関節症や関節リウマチなどを治療する人工関節手術。月・金曜に外来を担当。
『ひざの痛みは、まだ痛みが弱いからと放置していると悪化する可能性があります。早めに受診してください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q ひざがズキンと痛くなるのはどうして?

ケガをしたわけではないのに、ひざに痛みを感じる場合は、「変形性ひざ関節症」の疑いがあります。変形性ひざ関節症とは、ひざ関節の軟骨がすり減って、痛みが生じたり水が溜まったりする病気です。初期段階では、寝返りを打った時、車から降りた時、立ち上がった時といった、ひざを動かし始める瞬間や階段を降りる際などに、ひざの内側にズキンと激痛が起こります。動き出すと症状が治まりますが、何度も繰り返しているうちに徐々に内側の軟骨が消失してO脚(きゃく)に変形し、正座ができなくなったり、脚をまっすぐ伸ばせなくなったりします。ひざ以外に手首など他の箇所にも痛みがある場合は、他の病気の可能性がありますので、医療機関を受診するようにしてください。

Q 変形性ひざ関節症にかかる原因は?

原因はさまざまですが、ひとつは老化によるものです。日本では約2,000万人もの変形性ひざ関節症患者がいると推定されており、その大部分が50歳以上の方です。男女比では3:7で圧倒的に女性のほうが多く発症します。女性に多い原因は明らかになっていませんが、筋力が男性に比べて弱い人が多いということと、閉経後のホルモンバランスの変化により骨粗しょう症になりやすくなることが関係すると考えられています。
また、男女問わず肥満の方がかかりやすい病気でもあります。体重が1kg増えただけで、歩行時のひざの負担は3kg増加します。太っている方や筋力の弱い方は、日々、ひざにダメージがかかっていて、その度に軟骨が少しずつ摩耗し、50歳以降になると、特にきっかけがなくても痛みが生じ始めるケースが多くあります。また、筋力がある方や痩せている方でも、何度もひざのケガを繰り返している場合には発症しやすくなります。

Q どんな治療をするの?

軟骨を保護する作用があるヒアルロン酸の注射や、ひどい痛みがある時は、ステロイド剤を打つこともあります。O脚への変形を遅らせる効果があるインソール(かかとの外側部分が高くなった靴の中敷)や、ひざの動きを助けるサポーターなどの装具を処方することもあります。ただ、これらは一時的に痛みを楽にするためのもので、根本的な治療にはなりません。そのため並行して、ひざ関節への負荷を軽減する筋肉をつけるトレーニングを行っていただきます。さらに肥満の方は、減量するための食事指導を行います。
以上のような治療を行っても痛みが治まらない、安静にしている時も痛い場合は、人工関節をいれる手術や、脛(すね)の骨を切って脚の変形を矯正する「骨切(こつぎ)り術」を検討することもあります。骨切り術は、自分のひざを残せるため、スポーツもできるようになりますが、骨の強度が必要になるため、年配の方には負担が大きく、若い方に行われることが多いです。一方、人工関節の手術は、痛みを取り除くには良い方法ですが、激しい運動ができないため、年配の方に行われることが多いです。

Q 効果的な筋力トレーニング法は?

ひざを伸ばすトレーニングが効果的です。椅子に座って足先を持ち上げて、ひざを5~10秒間伸ばします。この動作を1日何度も繰り返し行ってください。また、水泳やエアロバイクといった運動も効果的です。特にプールでの運動はおすすめ。ひざが痛い時は、陸上でのウォーキングは控えた方がいいですが、水の中は浮力が働くので、ひざへの負担が軽減されます。泳げない方は、プールの中を歩くだけでも効果があります。

Q 痛みがある時はどうすればいい?

痛みを我慢せず、ひどくならないうちに病院で診てもらうことが大切です。痛みが精神に与えるダメージは大きく、痛みのせいで引きこもりになったり、うつ病になったりする方がいらっしゃいます。女性の平均寿命は88歳ですが、健康寿命は76~78歳と言われています。残りの10年間は介護生活を送る人が多いということです。これは、足腰が動かなくなることが原因のひとつ。人は歩けなくなると認知症が進むと言われ、心肺機能も落ちて寿命が縮まる可能性が高まります。早めに受診するほど、将来歩けなくなる、引きこもってしまうといった状況を回避できます。また、病院に行くことは、痛みの原因を調べるためにも大切です。実は変形性ひざ関節症ではなく、筋肉や腱(けん)に原因がある場合や、骨壊死(こつえし)、関節リウマチにかかっている可能性もあります。生涯、健康に過ごすためにも、痛みを感じた時点で病院に行き、原因を調べて適正な治療を受けてください。

Q 将来、変形性ひざ関節症にならないためには?

筋力をつけること、肥満にならないことが最も大切です。ウォーキングは体にいい運動ですが、太っている方や筋力がない方がたくさん歩くと、ひざに負荷がかかってしまうことがあります。筋力トレーニングで大腿四頭筋(だいたいしとうきん ※太ももの前側の筋肉)や中臀筋(ちゅうでんきん ※お尻の筋肉)といった、ひざの負荷を軽減する筋肉を鍛えること、太っている方は減量をして適正体重を保つことが大切です。変形性ひざ関節症は、加齢とともに非常に多くの方に発症する病気ですが、一生かからない方もいます。痛みがないうちに、日常生活でしっかりケアを続けてください。

 

 

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