【教えて!沿線のお医者さん!】乾癬(かんせん)は感染しないって本当?(兵庫医科大学+阪神電車)

ここ数年で多くの人に知られるようになった「乾癬」。とはいえ、まだまだ詳しく理解できている人は少ないのが実情です。「乾癬は感染しないの?」「治療は難しい病気なの?」など、これまであまり知られていなかった症状や治療法などを、兵庫医科大学の今井康友先生に教えていただきました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年9月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 皮膚科学
講師 今井 康友先生
重症のアトピー性皮膚炎や乾癬患者に、新しい注射による治療や治験を行うなど、最新医療の研究に積極的に取り組む。
『乾癬だけでなくアトピーにも、よく効く新薬が近年誕生しました。悩まれている方は、ご相談ください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 乾癬はどういう病気なの?

皮膚に炎症が起きて、ポロポロと剥がれ落ちる病気です。肘や膝など、よくこすれる部分に発症しやすく、頭のフケのような白い粉が、衣服についたり、床に落ちたりします。乾癬の患者さんのうち、約半数の方は、かゆみも訴えられます。また、関節症状を伴う患者さんや、まれに膿を含んだ炎症が全身の皮膚に多発して、高熱を出し、最悪の場合、命を落とす患者さんもいらっしゃいます。乾癬は白人の方に発症しやすい病気で、100人に1人の割合で発症するのに対し、日本では1,000人に1人の割合で発症すると推定されています。現在の日本では珍しい疾患だといえますが、食生活の欧米化により、患者数が徐々に増えつつあります。

Q どんな人がかかりやすいの?

乾癬は生活習慣病のひとつだと言われています。高血圧、糖尿病、高脂血症などと同じように、タバコを吸っている方や太り過ぎの方、暴飲暴食をしがちな方などがかかりやすい病気です。ただし、遺伝的な要因で、もともと乾癬にかかりやすい体質の方はいらっしゃいますし、性別では、年齢が若い場合は女性が多く、高齢になるにつれ、男性の患者さんが多くなるようです。また、精神的ストレスがかかると乾癬の症状が悪化するとも考えられており、適度なリフレッシュが大切ですね。

Q 乾癬は感染しないって本当?

本当です!「かんせん」という名称から受ける印象や、症状が一見すると水虫に似ていることから、感染する病気だと誤解している方がいらっしゃいます。また、そのことで、辛い思いをしている患者さんも大勢いらっしゃいます。乾癬は、決してうつらない病気だということを、広く一般の方に知ってもらいたいと思います。

Q 乾癬の症状は治せるの?

数年前まで、乾癬は原因不明で治すことが難しい病気でした。しかし近年、乾癬の原因物質が明らかになり、その原因物質だけを取り除くことができる新しい注射の治療薬がたくさん登場し、保険を使って治療を受けられるようになりました。その注射の治療を行えば、皮膚症状の90%以上を消失させることができるようになったのです。皮膚症状だけでなく、関節症状や発熱などの症状がある方も、改善がみられることがわかっています。新しい治療法なので、まだ広く知られておらず、「乾癬の症状は治らない」と思って諦めている患者さんもいらっしゃいます。ぜひ多くの方に広めていきたいですね。

Q 注射の治療について詳しく教えて!

注射の治療は、1~3か月に1回、皮下注射を打つだけの治療です。3か月分までお薬を出すことができますので、自分で注射を打てる方なら、3か月に1回通院するだけで済みます。注射での治療がなかった時は、毎日、身体中に薬を塗布しなければならず、患者さんの大きな負担になっていましたが、その塗り薬を併用する必要もありません。

Q 注射の治療の副作用はある?

バイ菌に弱くなるという副作用があります。従って、結核にかかったことがある方、B型肝炎ウイルスがある方など、感染症を持っている方は、治療することで感染症にかかるリスクが高まるため、使用することができません。そのため、注射の治療を行う際は、感染症にかかっていないかを入念に検査することが不可欠で、当院をはじめとした日本皮膚科学会が定める医療機関を受診していただく必要があります。万が一副作用が現れた際も、そういった医療機関であれば早急に対処できる設備が整っていますので安心です。

Q 注射の治療はずっと続けるの?

注射の治療の効果は、早い方なら1~3か月で現れます。症状が完全におさまり、治療を終えられる方は少なくありませんが、残念ながら注射の治療を終了すると再発してしまうことがあります。注射の治療で症状を消失させることができても、乾癬にかかりやすい体質までを改善することはできません。治療が終了した後も再発することがないよう、正しい生活習慣を続けることがとても大切です。また、治療中も同様で、症状が現れにくいからといって喫煙や暴飲暴食をすることは厳禁。生活習慣病である乾癬にかかっているということは、その他の生活習慣病(心筋梗塞や糖尿病など)にもかかりやすいということです。治療中も治療後も、くれぐれも正しい生活習慣を心掛けましょう。

Q 注射の治療を受けるには?

まずは、かかりつけの医師に相談して、注射の治療を受けられる病院を紹介してもらってください。注射の治療には副作用がありますので、治療開始前には十分な検査が必要となります。10年間、塗り薬を使い続けて症状を緩和させるのがせいぜいだったのに、注射の治療で劇的に改善した方や、肌がキレイになって自信がつき結婚できたという方など、幸せになった方を私はたくさん見ています。深刻に悩んでいる方は、一度ご相談ください。

 

 

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