【教えて!沿線のお医者さん!】不妊治療は、いつ始めればいい?どんな方法があるの?(兵庫医科大学+阪神電車)

晩婚化の影響で、女性が妊娠・出産を希望する年齢が高くなり、不妊症の検査・治療を受ける人も増加しています。「自分は不妊症なのかも」「いつか妊娠できるのかな?」と不安な人もいるかもしれません。
不妊症とはどういう症状を指すのか、治療を開始するのはいつがいいのかなど、兵庫医科大学の柴原 浩章先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 産科婦人科学講座
主任教授 柴原 浩章先生
米国で初めて体外受精に成功した東バージニア医科大学での留学経験を有し、特に不妊治療と体外受精を専門とする。免疫性不妊症のテーマで学位を取得し、現在、日本生殖免疫学会でも理事長を勤める。月・水・木曜に生殖医療センター外来を担当。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 不妊症の定義を教えて!

避妊をしていないカップルが、1年を経過してもお子さまに恵まれない場合、不妊症と診断します。近年、女性の平均初婚年齢が上がり、35歳を過ぎても妊娠を希望されない方が増えています。しかし、年齢が上がると、白髪やしわが増えるのと同じように、卵子も老化して数が減り、妊娠できる確率が低くなります。卵子の数は、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査という血液検査で調べられます。閉経年齢に個人差があるように、AMH値にも個人差があり、同じ年齢の方でも、卵子の数に差が出ます。ご自身が妊娠しやすい状態かを知るためにも、妊娠を希望される方は、少しでも早く検査を受けることをおすすめします。

Q どうして不妊症になるの?

女性の不妊症の原因で最も多いのが、排卵が不安定になる「排卵障害」。次に多いのが、卵管の通りが悪くなる「卵管閉塞」です。男性の不妊症の原因で最も多いのが、精子の数が少ない「乏精子症」や精子の動きが悪い「精子無力症」です。その他にも、受精しにくい「受精障害」や受精卵が子宮に留まりにくい「着床障害」など、初期の検査では分からず、治療を進めるうちに分かる原因もあります。また、これらの原因以外に、先述したような妊娠を希望する女性の高齢化による卵子の老化など、年齢因子も大きく関わってきます。

Q 卵子の老化を防ぐ方法はある?

残念ながら、卵子の老化を止めることはできません。そこで、近年では、若いうちに卵子を凍結保存しておくという方法を選択できるようになりました。30代は仕事をし、40代になったら婚活、妊活したいという方が利用されるケースが増えています。また、抗がん剤治療などで卵子にダメージを与えると、将来妊娠しにくくなる可能性があります。そのため、抗がん剤治療などを行う前に、不妊治療の医師が提案をし、ご希望に応じて卵子凍結や卵巣凍結を行っています。

Q どんな検査をするの?

女性の方には、まず基礎体温をつけていただき、排卵期と黄体期を調べます。そして、月経中、排卵前、黄体期のそれぞれの時期にホルモン検査(血液検査)をし、妊娠に影響する様々なホルモン量などを調べます。並行して、子宮卵管造影法(レントゲン検査)で卵管の通り具合を調べたり、超音波検査で、卵胞※1の大きさを調べたりします。排卵日が近いことが分かれば、フーナーテスト(性交後試験)という、精子が子宮の中まで入ってきているかを調べる簡単な検査を行うこともあります。一方、男性の方には、精液検査を行います。また、何か他の病気が起因しているケースもありますので、当院では初診の時に、血圧や生活習慣病の検査も行っています。

※1 卵胞:卵子が成長してくると分泌液を貯めて、卵巣の中に袋を作る。卵胞の大きさを測ることで、排卵日を正確に知ることができる。

Q 不妊治療はどんなことをするの?

検査で見つかった原因に応じて、治療を行います。排卵障害のある場合には、卵巣を刺激し、ホルモンの分泌を促進する排卵誘発剤を使用します。高プロラクチン血症※2の方には、プロラクチンを下げる薬を服用していただくと同時に、元となる原因(甲状腺機能の低下、胃薬や精神科の薬などの服用、脳下垂体の腫瘍など)を調べて、治療にあたります。卵管の通りが悪い方には、卵管を掃除する卵管鏡下卵管形成術を行います。こういった治療と並行して、最も妊娠しやすい性交渉の時期をアドバイスするタイミング療法も行います。男性の精子に原因がある場合は、泌尿器科で治療をします。当院の泌尿器科では、男性不妊の専門の先生がいて、土曜日に外来を受け付けています。

※2 高プロラクチン血症:乳汁分泌を促すホルモンであるプロラクチンが、妊娠していない時にも高く
なる疾患。排卵障害や流産の原因となる。

Q それでも妊娠しない場合は?

治療を行っても結果が出ない場合や、男性に原因があったものの、女性の年齢が高く、男性の治療回復を待つ猶予がないなどの場合は、次のステップとして人工授精を行います。人工授精とは、女性が妊娠しやすい排卵期に、精子を子宮腔内に注入する方法です。人工授精を5~6回行っても結果が出なかった場合は、卵子と精子の受精を体外で行う体外受精を行います。体外受精をしても受精しない時や、精子の状態が悪い場合は、元気な精子を1個選び、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する顕微授精を行います。

Q 不妊治療はいくらかかるの?

人工授精、体外受精、顕微授精は自費診療です。人工授精は通常、1回2~3万円で、体外受精、顕微授精は数十万円と高額になります。しかし、自治体によっては一部助成もあるので、活用を検討してみてください。不妊治療は費用もかかりますし、ストレスもかかります。最近は、医師や看護師が親身に心の支えになってくれたり、辛い気持ちを相談できたりする心理カウンセラーを置く病院も増えています。不妊治療は、女性の年齢が少しでも若いうちから開始することで、妊娠の可能性が高まります。お二人だけで抱え込まずに、少しでも早く診察にかかるようにしてください。

 

 

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