【教えて!沿線のお医者さん!】血液型ってどうして必要なの?(神戸大学+阪神電車)

輸血の際に、血液型を確認することを知っていても、それは何故なのか?どのようにして調べるのか?など、詳しく知っている人は、実は少ないのでは?そこで、意外と知らなかった血液型にまつわる様々な知識を、神戸大学医学部附属病院の川本晋一郎先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年6月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院
輸血・細胞治療部
講師 川本 晋一郎先生
血液内科を専門とする。がん特有の血液の特徴を調べて、血液検査だけで早期発見へとつなげる研究を行うなど、最新医療に取り組む。趣味はマラソン。これまでにフルマラソンを5回完走。

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q そもそも血液型って何?

血液は「赤血球」「白血球」「血小板」といわれる血球(細胞)と、「血しょう」といわれる液体の4つの成分でできています。そして血液型は、血球成分の表面にくっついている物質の違いで分類されます。血液型と聞いておそらく真っ先に思いつくのは、A型、B型、AB型、O型に分類される血液型(ABO型)だと思いますが、これは赤血球の表面にあるA抗原、B抗原という物質に着目した血液型です。A抗原を持っている人をA型、B抗原を持っている人をB型、両方とも持っている人をAB型、両方とも持っていない人をO型と分類します。その他にも、A抗原、B抗原以外に抗原は数百種類あり、血液型も多種類存在します。ABO型以外によく知られているのは「Rh血液型」です。これは、D抗原に着目した血液型で、D抗原がある場合を陽性のRh(+)、D抗原がない場合を陰性のRh(-)と分類します。

Q 血液型はどうして重要なの?

抗原は、体の免疫反応を引き起こす物質です。ひとつの抗原に対して、血しょう内にあるひとつの抗体が反応し、抗原を排除しようと攻撃します。例えば、A抗原を持っている人(A型)は抗Bという抗体、B抗原を持っている人(B型)は抗Aという抗体、どちらも持っていない人(O型)は抗A、抗Bの両方の抗体があり、どちらも持っている人(AB型)は両方の抗体がないことが分かっており、抗AはA抗原に、抗BはB抗原に免疫反応を起こします。つまり、A型の人にB型の血液を輸血すると、体内に入ってきたB抗原に対してA型の人が持っている抗体・抗Bが反応して攻撃します。そのため、輸血をする患者さんや献血をされた方の血液型は、必ず詳細に調べる必要があります。

●赤血球の抗原と血液中の抗体の組み合わせ

Q O型の人は万能って本当?

O型の赤血球は抗原を持っていないので、どの血液型の人に輸血しても、輸血された人の抗体が働くことはありません。O型が万能と言われるのはそのためです。ただし、O型の血しょう中にある抗体(抗A、抗B)まで輸血してしまうと、輸血された人がA、B、AB型のいずれかの場合、その人がもともと持っているA抗原やB抗原を攻撃してしまう恐れがあります。そのため、血しょう成分を除いて赤血球だけを抽出した「濃厚赤血球製剤」を使用する必要があります。ただし、輸血するのは血液型がわかっていない人への輸血など特殊な場合のみに限られ、自分と同じ血液型の製剤を輸血するのが基本です。

Q 成分輸血について教えて!

成分輸血とは、血液中の4成分のうち、必要な成分のみを輸血する方法です。例えば、大量に出血して極度の貧血を起こした時には「赤血球製剤」を、出血を止める必要がある時には血液を固める作用がある「血小板製剤」を、血液中のたんぱく質が不足した時には「血しょう製剤」を輸血します。現在は、輸血用の血液は成分ごとに保存されています。

Q 輸血用の血液は足りているの?

血液の各成分には有効期限があります。血しょう製剤は液体なので新鮮なまま凍結して1年間保存できますが、赤血球製剤は採血後3週間、血小板製剤は4日間しか保存できません。また、輸血された患者さんの抗体が輸血した血液の抗原を攻撃してしまわないよう、最適な血液を見つけるためには、たくさんの新鮮な血液サンプルが必要です。多くの方に献血が呼びかけられているのは、そのためです。

Q 献血したいけど、貧血にならない?

献血には、全血献血と成分献血があります。献血バスなどで200mlや400mlを採血するのは、全血献血です。一方、成分献血は献血ルームなどで実施しているもので、成分採血装置を使用して血小板や血しょうなどの成分だけを採血し、回復に時間がかかる赤血球は再び体内に戻すという方法で行います。全血献血でも日常生活に支障はありませんが、貧血が心配だという方は、貧血の原因となる赤血球を採取しない成分献血を検討されてみてはいかがでしょうか。

Q 自分の血液は輸血できる?

他の人の血液を輸血すると、それまで自分が持っていなかった抗原が体内に入り、新しい抗体(不規則抗体)を作ることがあります。そういったことを避けるために、手術を受ける前に、自分の血液を自分のために保存しておく自己血貯血という方法があります。献血と違って年齢制限がなく、体重や体調に合わせて量を調整して採血します。採血後は、増血剤などで通常の血液量に戻してから手術を行うので、貧血の心配もありません。また、手術後の傷口をくっつけるフィブリン糊という製剤は血液から作りますが、当院のように自分の血液から作る機械を導入している病院もあります。いずれも、主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

 

 

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