【教えて!沿線のお医者さん!】今さら聞けないコレステロールの常識を教えて!(兵庫医科大学+阪神電車)

「コレステロール」という言葉をよく耳にしていても、実は詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。「コレステロールってそもそも何?」「血液検査で見るLDLとHDLの違いは?」「増えるとどうなるの?」などの素朴な疑問について、兵庫医科大学の石原正治先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年5月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 循環器内科・冠疾患内科
主任教授 石原 正治(いしはら まさはる)先生
専門は狭心症、心筋梗塞(こうそく)。今年3月に改定された心筋梗塞の診療ガイドライン作成にも携わる。火・木曜の初診外来を担当。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q コレステロールとは何ですか?

コレステロールは、細胞膜の成分となったり、ステロイドホルモンや性ホルモン、ビタミンDの原料になったりする脂質の一種です。コレステロールの約8割は肝臓で合成され、残り2割は、食事から摂取したコレステロールが小腸から吸収されます。

Q コレステロールは必要なもの?不要なもの?

コレステロールは生命維持に必要なものですが、昔と比べると飽食になった現代では、体に必要なコレステロール量は、十分に摂取できていると考えられます。逆に、過剰摂取し血液中のコレステロールの量が増加すると動脈硬化が起こり、様々な病気の原因となります。そのため、増やすことよりも減らすことを考える方が、現代の私たちには必要です。

Q 血液検査にあるLDLとHDLって何?

コレステロールは血流に乗って全身へと運ばれますが、脂(あぶら)なので水分である血液に溶け込むことができません。そこで、血液となじみやすいタンパク質(皮)でコレステロール(餡)を包んだ、お饅頭のようなリポタンパクという構造になって血液の中を移動します。このリポタンパクは大きさや皮の種類によってLDLとHDLに分類されます。LDLは肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役目を、HDLは全身から不要なコレステロールを回収する役目を担っています。LDLで供給されるコレステロールをLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLで回収されるコレステロールをHDLコレステロール(善玉コレステロール)と言い、回収後は肝臓で分解、処理されます。

Q LDLコレステロール値が高くなるのはなぜ?

全身に運ばれたLDLコレステロールを細胞が必要としない場合、不要なLDLコレステロールは血液中を循環し続けます。通常は、HDLによって回収されたり、体の調節機能が、肝臓での合成量や小腸での吸収量を減らしたりして調整しようとしますが、食べ過ぎが続いたり、喫煙、遺伝、病気など、何らかの原因があるとうまく調整できず、不要なLDLコレステロールが増え続けてしまい、数値も高くなります。

Q LDLコレステロールが増えるとどうなるの?

不要なLDLコレステロールは血管内を浮遊し続けるため、その状態が続くと、やがて劣化して血管壁に付着し、動脈硬化の原因となります。心臓を取り巻く冠動脈の硬化が進むと、血管が狭くなり、十分な酸素が供給されずに「狭心症」を起こしたり、血栓ができ血管を閉塞してしまうと「心筋梗塞」を起こしたりする危険が高まります。また、脳や首の動脈硬化が進むと「脳梗塞」を起こす危険が高まります。

<LDLコレステロールの増加が引き起こす病気と症状>
●狭心症:階段や坂を上ると胸が痛くなる。
●心筋梗塞:非常に激しい胸の痛みが起こる。急性治療が必要。
●脳梗塞:意識がなくなる、手が動かなくなる、ろれつが回らなくなる、顔半分が動きにくい、手で物をつかみにくいなど。心筋梗塞同様、急性治療が必要。

Q どれくらいの数値だと危険?

冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞など)の既往歴などにより、基準となるLDLコレステロール値が変わります。

冠動脈疾患の既往歴がある方:100mg/dl
冠動脈疾患の既往歴があり❶~❸のどれかに当てはまる方:70mg/dl
❶家族性高コレステロール血症※
❷急性冠症候群
❸糖尿病で、かつ非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患などを合併

冠動脈疾患の既往歴がない方は下記のリスク度チェックの分類によります。
高リスク:120mg/dl
中リスク:140mg/dl
低リスク:160mg/d

上記を超える数値の場合は、生活習慣の改善を行い、数値が下がらなければ薬物療法を検討します。

※家族性高コレステロール血症:遺伝的にコレステロールが高くなる病気。赤ちゃんの頃からコレステロール値が高いため、若年齢で動脈硬化が進みやすい。家族の中に若年齢(男性55歳未満、女性65歳未満)で心筋梗塞にかかった人がいる場合は要注意。

Q LDLコレステロール値を下げる薬はあるの?

LDLコレステロールの合成を阻害するスタチンや小腸からの吸収を抑えるエゼチミブなどの薬があります。HDLコレステロールを増やすこともLDLコレステロール値の低下につながりますが、回収能力の高いHDLコレステロールを増やす効果的な薬はまだないのが現状です。ただし、運動や禁煙でHDLコレステロール値が上昇することがわかっています。さらにLDLコレステロール値を下げることもできるので、薬を飲んでいる人でも生活習慣の改善は必要です。

 

 

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