【教えて!沿線のお医者さん!】要注意!辛い下痢、重病のサインかも?(神戸大学+阪神電車)

下痢は、緊張やストレス、食生活の乱れなどで起こる突発的なものだと思い込んでいませんか?実は、何か別の病気のサインである可能性も考えられます。「どんな病気の可能性があるの?」「医療機関にかかった方がいいのはどんな時?」など、神戸大学医学部附属病院の大井 充先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部
特定助教 大井 充先生
消化管、特に大腸の内視鏡検査を専門とし、ほとんど苦痛のない検査を提供している。炎症性腸疾患に詳しい。
『内視鏡検査は、多くの病気の治療や予防につながります。不調が続くようなら検査を受けてみてください。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 下痢症ってどんな病気?

口から入った食べ物が、胃、十二指腸、小腸を通る時、各器官で消化液が大量に分泌されます。自身で摂取した水分と合わせると、1日に約10リットルもの水分が腸を通ると言われています。多くは栄養と共に体内に吸収され、残った水分が大腸で吸収されて、適度な硬さ(水分量70~80%程度)の便となって排出されます。この水分量が何らかの原因で85%くらいになり、便が液状またはそれに近くなる状態を「下痢便」と言います。さらに、下痢便を繰り返し、腹部の不快感や腹痛を伴ったり、トイレの回数が普段より増えてQOL(生活の質)が下がったりするなど、ご本人が困るような症状を伴うことを「下痢症」と呼びます。「下痢症」は急性と慢性に分類され、4週間以上続く場合は慢性と定義します。

Q 医療機関を受診した方がいいの?

下痢症の大半は、急性のウイルス性疾患です。これは、胃腸風邪と呼ばれるもので、風邪をひいた時に、喉が痛い、関節が痛いなどの症状が現れるのと同じように、腸が調子を崩しているだけなので、安静にしていれば2~3日、長くても1週間程度で治ります。下痢が起こるのは、身体が悪いものを早く体外へ出そうとしている正常な反応なので、極力下痢止めも服用しない方がいいでしょう。ただし、急性の場合でも稀にO157などの細菌に感染して食中毒を起こしていることがあり、放置すると症状が悪化する場合があります。血便が出たり、嘔吐や発熱を伴う場合は、医療機関を受診してください。また、2週間以上、下痢便を繰り返す場合は、できるだけ内視鏡検査などを受けて原因を調べるようにしてください。

【セルフチェック】今すぐ受診を!こんな下痢に要注意!
・血液が混じっている
・嘔吐を伴う
・2週間以上、下痢便が続く
・発熱を伴う

Q 大腸内視鏡検査は辛くない?

今は内視鏡そのものや技術が進歩しており、鎮痛剤・鎮静剤を併用すれば、ほとんど苦痛を感じないという方が大多数です。検査前に飲む2リットルの下剤(腸管洗浄液)も、剤型や味が改良されて比較的スムーズに飲めるようになりました。大腸がんは、女性のがん死亡率1位ですが、内視鏡検査を受ければ早期発見ができたり、根治できる可能性が高くなります。がんのもととなるポリープを切除すれば、予防できる病気なので、ぜひ検査を受けてください。

Q 慢性の下痢症だと、どんな病気の可能性があるの?

最も多いのが過敏性腸症候群で、日本人の10~20%がかかっていると言われています。その他に多い例では、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)や、感染症では腸結核、アメーバ性腸炎、悪性腫瘍では大腸がんなどがあげられます。特に潰瘍性大腸炎は、近年日本でどんどん増えており、アメリカに次いで世界2位となる約20万人の患者数が報告されています。いずれの病気も、内視鏡検査を受けることで特定できます。

<慢性の下痢症を伴う主な病気>
●過敏性腸症候群

主にストレスが原因で、脳と腸の間のホルモンバランスが崩れて発症するが、検査をしても原因が見つからないのが特徴。

[症状]下痢型(下痢が続く)、便秘型(便秘が続く)、混合型(下痢と便秘が交互に起こる)がある。お腹が張る、腹痛などの症状を伴うが、排便で改善する。
[治療]症状に応じた飲み薬を服用する。特に便秘型の人には有効な治療薬が増えているので、悩まずに受診を。

●炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
何らかの腸管免疫異常により、小腸、大腸に炎症が起こる難治性の疾患。

[症状]若い方の発症が多く、慢性的な下痢や血便、発熱を伴う。
[治療]近年、効果の高い薬剤が増えてきたことで、早期治療で寛解(症状がなくなり日常生活が送れる状態)できる場合が多い。

●大腸がん
大腸に悪性の腫瘍ができる。良性の腫瘍(いわゆるポリープ)ががん化してできることが最も多い。

[症状]急に便秘になる(特に高齢者は可能性が高い)、下痢と便秘を繰り返す、血便が出る、便が細くなる、腹痛など。
[治療]初期段階であれば内視鏡で切除が可能。取り切れずにステージが進んでいた場合でも、手術や抗がん剤治療で十分根治の可能性あり。

●腸結核
腸が結核菌に感染して起こる病気。元々肺結核を患っていた人や、肺結核患者と一緒に暮らして感染して発症するケースがほとんど。

[症状]下痢、血便、腹痛、発熱、食欲不振、体重の減少など。無症状のこともある。
[治療]抗結核薬を用いて治療する。現在は、正しく治療すれば完治できる。

●アメーバ性腸炎
赤痢アメーバが大腸粘膜へ感染することにより発症する。性行為感染症(STD)の一つ。

[症状]下痢、発熱、右わき腹の痛みなど。
[治療]飲み薬で根治が可能。パートナーの治療も必要。

 

 

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