【教えて!沿線のお医者さん!】花粉症かと思ったら大間違い!他の病気の可能性も!?(兵庫医科大学+阪神電車)

今の時季、辛い鼻づまりや鼻水、くしゃみに悩んでいる人の中には、自己判断で花粉症だと思い込んでいる人も多いのでは?「花粉の飛散時期が過ぎたら治まるだろう」と放置していたら、実は違う病気にかかっていて、症状が悪化する可能性も。どんな病気の可能性があるのか、兵庫医科大学の都築建三先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年3月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
准教授 都築 建三先生
日本耳鼻科咽喉学会認定専門医。日本アレルギー学会アレルギー専門医。特に鼻科学を専門とする。月・木曜日に診療を担当。慢性副鼻腔炎の術後の評価法と治療法に関する論文が優秀だとして、第55回日本鼻科学総会・学術講演会にて、「第23回日本鼻科学賞」を受賞。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 花粉症と間違いやすい病気ってあるの?

花粉症のようにくしゃみや鼻水、鼻づまりが起こる症状で考えられる主な病気は、大きく分けると鼻炎と副鼻腔(ふくびくう)炎があります。鼻の中は、構造的に鼻腔(鼻の入り口付近)と副鼻腔(鼻腔の周囲にある空洞部分)に分かれていて(※イラスト参照)、鼻腔に起きるのが鼻炎、副鼻腔に起きるのが副鼻腔炎です。これらは、感染性と非感染性に分かれ、感染性の代表的なものが、インフルエンザや風邪などのウイルスに感染して起こるウイルス性の鼻炎や、免疫力が落ちて細菌に感染して起こる細菌性の鼻炎で、非感染性の代表的なものがアレルギー性鼻炎です。花粉症はアレルギー性鼻炎に含まれますが、ダニやハウスダストなど花粉以外でもアレルギー反応を起こす場合があります。一般的に、鼻炎が長く続くと副鼻腔にまで炎症が広がります。さらに、分泌物が溜り、粘膜が腫れてポリープ(鼻茸(はなたけ))ができ、副鼻腔炎へと進行します。また、最近注目されている非感染疾患の一つに、難病に指定されている「好酸球性副鼻腔炎」があります。これは、血液中の好酸球(白血球の一種)濃度が高い方にみられる疾患で、副鼻腔にポリープができ、アレルギー性鼻炎や喘息などを併発します。どの疾患も1か月以内に症状が治れば急性、3か月以上続けば慢性と区別します。慢性の場合、症状は比較的穏やかですが、何らかの原因(風邪など)で急に症状が悪くなること(急性増悪)があります。

Q 花粉症と見分ける方法はある?

発熱や節々の痛み、全身の倦怠感を伴う場合は、ウイルス性や細菌性の鼻炎である可能性が高いです。また、花粉症の場合、鼻水は透明でサラサラとしていますので、鼻水に色がついている、濁っている、ドロっとしている、ベタベタしている、固形混じりであるという場合や、痰がらみの咳が出るという場合は、細菌性の鼻炎や副鼻腔炎などにかかっている可能性が考えられます。副鼻腔炎の鼻水以外の症状は、のどに鼻水が流れる後鼻漏、頭重感(ずじゅうかん)・頭痛、顔面の圧迫感・痛み、嗅覚障害などがあります。中でも、好酸球副鼻腔炎は、嗅覚神経の近くにポリープができるため、初期段階から嗅覚障害を伴います。大人になってから喘息になった方が重症化するケースが多いのも特徴です。逆に、小さいころに喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にかかっていた方は、アレルギー性鼻炎が重症化しやすい傾向があります。また、鼻血が出る場合は、血管腫(良性の腫瘍)や、ガン(悪性の腫瘍)になっているという可能性も考えられます。症状がある場合には早めに医療機関で検査をして、原因を突き止めるようにしてください。

Q どんな検査をするの?

まずは、鼻の中を診て、ポリープがないか、腫れていないかを調べます。ポリープがある場合は組織検査を行うこともあります。また、血液検査でアレルゲンがあるかどうかを調べ、アレルギー性鼻炎が合併していないかを調べます。さらに、レントゲン写真や副鼻腔のCT、MRIなどの画像検査を行い、副鼻腔炎が認められるかどうか、あるならその程度を調べます。

Q 治療が必要な病気は?

どの鼻疾患でも治療は行いますが、特に副鼻腔炎は必ず治療が必要です。飲み薬(抗菌薬)の他、霧状の細かい粒子を鼻から吸って副鼻腔へと送り込むネブライザー療法などを行います。それで改善しない場合やポリープがある場合は、内視鏡手術が必要となることもあります。副鼻腔は大きな空洞ですので、多少分泌物が溜まっても、初期には自覚症状がないことが多く、症状が出てきた時には重症化しているケースがよくあります。また、副鼻腔は脳に近い部分にあるため、「副鼻腔真菌症※」の場合、真菌(カビ)が脳にも浸潤してしまうなど、脳に影響を与えることもあり得ます。症状が軽くても放置しないで、早めに受診して、画像検査を行うことをおすすめします。

※副鼻腔真菌症
空気中に存在する真菌(カビ)が原因となって引き起こされる副鼻腔炎のこと。カビが副鼻腔内で塊となって発育し、その周囲に膿がたまる。免疫力が落ちている場合にかかりやすく、粘りの強い鼻水や頬の痛み、頭痛などが表れる。

Q 鼻の健康を保つには?

鼻は乾燥が大敵です。エアコンを使用すると空気が乾燥しますので、加湿を行い、エアコンの風を顔に直撃させないように注意してください。ダニやハウスダストのアレルギーがある方は、布団を干すだけでなく、掃除機でしっかりと吸い取る(一畳分を30秒以上)ことが大切です。他には、適度な運動やバランスの良い食事なども心掛けましょう。お酒を控え、禁煙するのはもちろんですが、鼻には受動喫煙が最も悪いとされていますので、喫煙者の近くに寄らないことも大切です。
鼻の病気は、複数の病気が併発していたり、症状が軽いと思っていても放置しておくと悪化してしまったり、悪循環を招くケースが多いため、何らかの症状が現れたら自分で判断せず、耳鼻咽喉科を受診して原因を突き止めるようにしてください。副鼻腔炎は必ず治療が必要ですから、どろっと濁った鼻水が続く方は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

 

 

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