【教えて!沿線のお医者さん!】意外と知らない!自律神経失調症って何!?(兵庫医科大学+阪神電車)

原因が思い当たらないのに、「体がだるい」「めまいがする」などの症状が続くことがあります。それはもしかすると、体や心の病気が原因で自律神経の調節が乱れている、いわゆる自律神経失調症と呼ばれる状態になっているかもしれません。そこで、自律神経失調症についての正しい様々な知識を、兵庫医科大学の村知穂先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2019年1月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/


<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 精神科神経科学
助教 村 知穂(ちほ)先生
「身体と心をつなぐ医学」と言われているリエゾン精神医学と摂食障害を専門とする。
『自律神経失調症状の予防には、規則正しい生活、栄養バランスのいい食事、適度な運動が効果的です。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q そもそも自律神経って何?

私たちの意思ではコントロールできない内臓の働きを調節する、交感神経と副交感神経を総称して「自律神経」といいます。交感神経は、鼓動や呼吸を速くするなど、体を活発に活動させる方向へと働きかけます。副交感神経は、交感神経と拮抗する働きをしています。交感神経と副交感神経は、脳からほぼ全身を巡っていて、各器官が適切に機能するように、互いにバランスを取り合いながら働いています。

Q 自律神経失調症って?

自律神経失調症というのは特定の疾患をさすわけではありません。何らかの要因で交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、身体のさまざまな部分に不都合がでている状態を一般的に自律神経失調症と言います。走ると鼓動や呼吸が速くなりますが、これは全身に酸素や血液を送るために交感神経が働きかけて、鼓動や呼吸を活性化させているからです。しかし、緊張した時など、体を激しく動かしていないにも関わらずドキドキしたり、手に汗をかいたりすることがあります。これは、緊張が自律神経の調節に影響するために起こる症状です。また、立ち上がった時に、立ちくらみやめまいが起こる「起立性低血圧」も自律神経の乱れが原因となる場合があります。立ち上がると、重力によって脚に血流が集まるので、交感神経が、脳に血液を送ろうとして心臓の動きを速める指令を送ろうとするのですが、その調節がうまくいかないと、ふらつきが起こることがあります。

Q どんな症状が現れるの?

自律神経は体のあらゆる臓器を巡っていますので、その調節が乱れると、以下の表のように全身に様々な症状が現れる可能性があります。先述したように、自律神経には様々な要因が影響しますので、すぐに症状が収まるようであれば問題ありませんが、症状が続いて辛いという場合は、何か病気が隠れていることが考えられます。

頭 … 頭痛、頭重感
眼 … 眼が乾く、眼の疲れ、眼の違和感、まぶしい
耳 … 耳鳴り
口 … 乾燥、痛み、味覚障害
のど … 違和感、飲み込みづらい
心臓 … 動悸、胸痛
呼吸器 … 呼吸困難感(息苦しさ)
消化器 … 嘔気、便秘、下痢、腹痛、不快感、膨満感
膀胱 … 頻尿、残尿感、排尿困難
生殖器 … 勃起障害、射精障害、月経不順
血管 … 血圧の変動、立ちくらみ
手足 … 痛み、しびれ、ふるえ、冷え
筋肉・関節 … 肩こり、筋肉痛、関節痛
全身 … 微熱、倦怠感、疲労感、めまい、ほてり
精神 … 不安、不眠、イライラ、気力低下、情緒不安定

※上記の症状は一例です。また、症状があったからといって、必ずしも自律神経が乱れているとは限りません。

Q 自律神経失調症になる原因は何?

原因としてまず医師が疑うのは、体の病気です。自律神経の乱れを起こす病気は非常にたくさんありますので、状態によっては検査を考慮されることもあります。検査で体に異常が見つからない場合は、心の病気にかかっている可能性を考えます。以下に、自律神経失調症と関係の深い体と心の病気を挙げました。これらの症状があるのに、体も心も病気が見つからなかった場合は、何らかの体や心への負荷、ストレスなどが原因の可能性もあります。

●体の病気  ※下記の疾患、症状はあくまでも一例です。
循環器系 … 不整脈、起立失調症候群、起立性調節障害
呼吸器系 … 過呼吸症候群、ぜんそく
消化器系 … 過敏性大腸症候群、胆道ジスキネジー、神経症嘔吐症、反復性腹痛、神経性下痢
神経系 … 片頭痛、緊張性頭痛、パーキンソン病
耳鼻科 … メニエール病、乗り物酔い、咽喉頭異常感症
口腔外科 … 顎関節症
皮膚科 … 円形脱毛症、発汗異常、慢性じんましん
泌尿器系 … 膀胱神経症、夜尿症、心因性排尿障害
婦人科 … 更年期障害
内分泌系 … 糖尿病

●心の病気
うつ病、不安障害(パニック障害、広場恐怖、社交不安障害、全般性不安障害)など

Q どんな治療をするの?

体や心の病気が原因だった場合は、それらの治療を行うことで、症状は改善することがあります。しかし、病気が見つからなかった場合は、「最近変わったことはなかったか」「正しい食生活や適度な運動は取り入れられているか」など、体や心に負担がかかっていないか、そして、もしかかっていたならどう対処するか、を考えることが重要です。対処法は人それぞれ異なるので一概には言えませんが、自律神経を整える「自律訓練法」をネットや本などで調べて取り入れてみるのもいいと思います。大切なことは、自分にとって何が負担なのかを把握することです。「ストレスを感じるとしんどいから、敢えて感じないようにする」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それは、嫌な気持ちを心の中に抑圧しているだけ。消えてなくなっているわけではないので、心に負荷がかかり、自律神経の調節が乱れることもありえます。心が不調になれば体も不調になり、その逆もあるという「心身相関」の概念がありますが、その橋渡しをしている一つが自律神経。体の不調が現れたら、心にも目を向けるようにしてください。

 

 

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