【教えて!沿線のお医者さん!】痛みがなくても要注意!放っておくと危険な歯と口内の病気って?(神戸大学+阪神電車)

歯医者に行くのが面倒で、痛みがひどくなってから仕方なく通うという人って、実は多いのでは?ところが、歯や口内の病気は、痛みがないうちから進行している場合があるのです。放置すると、歯を失ったり、全身に影響したり、最悪の場合死に至るケースも。神戸大学医学部附属病院の古森孝英先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2018年12月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 歯科口腔外科
名誉教授 古森 孝英先生
各種レーザーの特徴を活かした患者さんにやさしい治療に取り組むほか、顎変形症手術を専門とする。
『最近では、口腔トラブル予防のために歯科医院に通院する人が増えています。歯科医院のかかり方に対する意識の変化も必要です。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 虫歯以外に知っておきたい歯や口内の病気はあるの?

代表的なものが歯周病と口腔(こうくう)がんです。歯周病は、放っておくと歯を失ったり、歯周ポケットから細菌などが血液に流れこみ、これが全身の組織に何らかの影響を与えることがあります。口腔がんは、進行すると、舌やあごの骨を大きく切除しなくてはならなくなり、最悪の場合死に至るケースもあります。歯周病や口腔がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないため、症状が現れた時には進行してしまっていることが多い怖い病気です。また、骨粗鬆症(こっそしょうしょう)などの治療に使われる骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネート系薬やデノスマブ)による治療中もしくは治療歴のある患者さんが、顎骨壊死(あごの骨が腐ること)や顎骨骨髄炎(あごの骨の内部にある骨髄が炎症を起こすこと)になるケースが、近年増加傾向にあります。

Q 歯周病ってどんな病気?

歯周病は、細菌の塊であるプラーク(歯垢)によって感染し、炎症が起こる疾患です。口内には500~600種類もの細菌が生息しており、そのうちの約20種類が歯周病の発症や進行に関係しています。適切なブラッシングでこれらを除去できていないと、歯肉に炎症が起こり、赤く腫れたり出血したりします(歯肉炎)。歯肉炎が改善されないと、炎症が広がり、歯と歯肉の境目にある歯周ポケットが深くなり、歯槽骨(しそうこつ)(歯ぐきの内側にある歯を支えている骨)が溶け始めます(歯周炎)。歯周病は、歯を失う最も大きな原因です。約80%の人に歯肉出血や歯石沈着など何らかの所見があり、約40%の人に明らかな歯周病の症状があるといわれています。主な症状は以下の通りですが、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。

【こんな症状があったら歯周病かも?】
✔歯ぐきが赤く腫れている
✔歯を磨くと出血する
✔歯ぐきから血や膿が出る
✔歯がぐらぐら動く
✔硬いものが噛みにくい
✔歯と歯の間に食べ物が挟まる
✔口臭がある

Q 歯周病が全身に及ぼす影響って?

歯周ポケットから体内に侵入した細菌や細菌由来の病原因子に加え、炎症が原因で作られる物質(サイトカイン)が、歯肉の血管を通じて血液に流れ込み、循環器疾患、糖尿病、骨粗鬆症、早産・低体重児出産などを招く可能性があります。また、唾液中の細菌が誤って気管に入り、肺に感染する「誤嚥(ごえん)性肺炎」も、特に高齢者の方に起こりやすくなります。

Q 歯周病を予防するには?

食後に適切なブラッシングを行い、口内を清潔に保つことが大切です。1日1回は、歯間ブラシやデンタルフロスを使ったケアも行いましょう。歯周病は、プラーク以外にも、加齢、肥満、喫煙、ストレス、噛み合わせ(歯並び)、糖尿病などの全身疾患も関与しますので、これらを防ぐための正しい生活習慣も重要です。さらに、3~6か月ごとに歯科医院で定期的に検診を受けるようにすると安心です。

Q 口腔がんについて教えて!

口腔がんは、がん全体の1~3%程度と決して多くはありませんが、認知度が低く、がんと気がつきにくいため、進行するまで放置されてしまうケースが多発しています。初期症状のうちに発見すれば、比較的簡単な治療で治すことができ、生存率も高いがんです。後遺症が残ることもほとんどありません。

Q 口腔がんの初期症状って?

口内の痛み、しこり、腫れ、粘膜のただれ、出血、歯のぐらつき、口臭など、多くの症状が挙げられますが、初期の段階では痛みが少なく、痛みが出てきた時には既に進行している場合が多いです。痛みがなくても、舌や歯ぐきの盛り上がり、硬いしこり、なかなか治らない口内炎などの症状が現れた際には注意が必要です。

【セルフチェック!口腔がんを疑う症状は?】
✔なかなか治らない腫れやしこりはないですか?
✔粘膜が赤くなったり白くなったりしているところはないですか?
✔2週間以上経っても治らない口内炎はないですか?
✔合わない入れ歯を無理して使っていませんか?
✔食べ物が飲み込みにくくなっていませんか?

Q 口腔がんを予防するには?

口腔がんは、他のがんと違い、患部を直接見ることができるので早期発見がしやすいがんです。定期的に口内を観察し、異変があれば歯科医院にかかるようにしてください。また最近は口腔がん検診も行われていますので、定期的に検診を受けることをおすすめします。同時にがんを寄せ付けない生活習慣(禁煙、お酒を控える、ストレスをためない、バランスのよい食事、適度な運動)を心がけることも大切です。

Q 骨吸収抑制薬による顎骨壊死の注意点は?

抜歯やインプラント治療がきっかけとなり、顎骨壊死を発症する可能性がありますので、よく相談されることが大切です。また、口内が不衛生な状態だと、顎骨壊死の症状を悪化させる恐れがあるので、歯ぐきの状態のチェック、ブラッシング指導、歯石の除去処置、入れ歯の調整など、定期的に歯科医院を受診するようにしてください。

 

 

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