【教えて!沿線のお医者さん!】糖尿病や骨祖しょう症に効果あり!?今話題の「骨ホルモン」って何?(兵庫医科大学+阪神電車)

私たちの体を支えている「骨」。実は、この骨から特別な物質「骨ホルモン」が分泌されていて、様々な臓器に働きかけ、体に良い効果を与えていることが近年マスコミなどで話題になっています。そこで、骨や筋肉の病気に詳しく、市民の方々を対象に心と体の健康チェックを行っている、兵庫医科大学の辻 翔太郎先生に、「骨ホルモン」について詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2018年11月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 整形外科学
助教 辻 翔太郎先生
複数の診療科のドクターが、各専門の立場から骨粗しょう症やメタボリック症候群などの研究発表を行うカンファレンスの世話人をし、骨粗しょう症の治療や予防、研究に精力的に取り組む。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 「骨ホルモン」って何?

骨は、皮膚と同じようにターンオーバー(新陳代謝)を繰り返しています。約5か月間かけて骨を溶かす破骨細胞が古い骨の一部を破壊し、その部分を修復する骨芽細胞が新しい骨を作るということを繰り返します(骨代謝)。こうして、3~5年という早いサイクルで全身の骨が入れ替わり、骨の劣化や疲労骨折などを防いでいます。この骨代謝が行われる際に分泌される物質のことを、「骨ホルモン」と言います。骨ホルモンには多くの種類がありますが、骨芽細胞から産生・分泌される「オステオカルシン」というタンパク質の一種が、近年「骨ホルモン」の代表として注目されている物質です。

Q オステオカルシンの働きは?

オステオカルシンは、すい臓や小腸、脂肪細胞、精巣などに働きかけて、インスリンの分泌を促進したり、インスリンを効きやすくしたりするほか、糖代謝や脂質代謝、エネルギー代謝を活発にし、高脂肪食を原因とする肥満、高血糖、脂肪肝の改善や、内臓脂肪を減少させる効果があることが報告されています。また、脳にも到達して、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の合成を促進し、神経活動を抑制する物質(GABA)の合成を阻害することで、不安やうつ病の抑制、学習や記憶の改善にも関与することが、近年の研究で解明されつつあります。

Q オステオカルシンの分泌量が低下するとどうなるの?

糖や脂質代謝が低下して、糖尿病、肥満、高脂血症のリスクが高まります。また、オステオカルシンは骨を作る骨芽細胞から分泌される物質なので、分泌量が低下するということは、骨代謝が正常に行われていない状態のため、骨粗しょう症になりやすいのです。骨粗しょう症は、メタボリック症候群(※1)や、サルコペニア(※2)、フレイル(※3)とも密接な関わりがあるため、これらのリスクも高まります。

(※1) 肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧、心血管症(心筋梗塞、脳出血など)といった病気の総称
(※2) 全身の骨格筋量と骨格筋力が低下すること
(※3) 健康な状態と要介護状態の中間的な段階

Q 分泌量が低下する原因は?

骨の主成分となるカルシウムや、骨の形成に必要なビタミンD、ビタミンKの不足のほか、痩せ過ぎや太り過ぎ、閉経、糖・脂質代謝や骨代謝の不良などがあると、分泌量が低下します。また、オステオカルシンは、骨に刺激を与えることで分泌量が増えるため、長期入院、うつ、認知症、歩行困難などで運動量が減少して骨への刺激が少ない方は、オステオカルシンが不足しやすい傾向があります。

Q オステオカルシンを増やすためには?

栄養バランスの良い食事をすることです。特に、骨の形成に関与するカルシウム(牛乳、干しエビ、シシャモなど)、タンパク質(肉、魚、大豆製品など)、ビタミンD(鮭、鶏卵、干し椎茸など)、ビタミンK(納豆、ほうれん草、ブロッコリーなど)の摂取は重要です。ほか、前述のように運動を行うことでもオステオカルシンの分泌量が増加します。

Q オステオカルシンを増やす運動って?

以下(【骨ホルモンの分泌を促進する体操】)のような運動がおすすめです。高齢の方でハードな運動がキツイという方は、背筋を伸ばす、大股で歩いてかかとから着地する、椅子から立ち上がる、椅子に座ってかかと落としをするなど、日常生活に簡単なエクササイズを取り入れると良いでしょう。これらの運動は、骨粗しょう症の予防にも有効です。骨粗しょう症になると、骨折による死亡率が格段に上がります。骨を健康に保つことで、オステオカルシンだけでなく、「FGF-23」という物質も分泌されますので、動脈硬化などの心血管症の改善も期待できます。

【骨ホルモンの分泌を促進する体操】
ハードルジャンプ
テーブルから30cmほど離れた地面に本を置き、本を挟む形で前に立つ。両手を肩幅に開いてテーブルにつき、両脚で本を跳び越えては戻る、という動作を繰り返す。(1分)

けんけん歩き
片膝を後ろに曲げて片脚で立つ。そのまま片脚で跳ねるように前進し、かかとから着地するように心がける。5歩ほど進んだら方向転換し、脚を替えて繰り返す。(1分)

バックジャンプ
脚を肩幅に開いてつま先を前に向け、両手は頭に添える。そのまま後ろへ両脚で跳び、かかとから着地。5歩分ほど後ろに跳んだら、180度方向転換して繰り返す。(1分)

スクワット
脚を肩幅に開き、手は頭の上、足先は前を向くようにする。そこからゆっくりと膝を曲げていき、地面と太ももが平行になったら元に戻す。(1分)

かかと落とし
背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、両脚のかかとを高く上げ、つま先立ちに。全体の体重をかかとに伝えるようなイメージで勢いよくかかとを落とす。(1日30回)

 

 

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