【教えて!沿線のお医者さん!】放っておくと危険!貧血は重大な病気のサインかも!?(兵庫医科大学+阪神電車)

女性に多いと言われる「貧血」。月経があるから仕方ないとあきらめていたり、自覚症状がないため貧血と気付かずに日々の生活を送っている場合もありますが、実は重大な病気が隠れているかもしれません。「どんな病気が隠れているの?」「貧血の治療はどうすればいい?」などの疑問について、兵庫医科大学産婦人科学の原田佳世子先生に伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2018年7月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 産科婦人科学
講師 原田 佳世子先生
周産期医学、胎児超音波、出生前診断を専門とする。水曜日の一般外来を担当。
『初めての人にとって婦人科はハードルが高いかもしれませんが、女性特有の病気を早期発見するためにも、ぜひ受診してください。』

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
http://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q どんな状態を貧血と言うの?

貧血とは、体中に酸素を運ぶ赤血球が不足している状態のことを言います。血液検査を行い、赤血球数とヘモグロビン(血色素)量が基準値より低い場合に貧血と診断します。

Q 貧血になる原因は?

貧血の多くは、鉄不足によって起こる「鉄欠乏性貧血」です。鉄が不足すると、赤血球内で酸素を運ぶ役割を担っているヘモグロビンが産生できなくなるため量が減り、赤血球のサイズ(MCV値)も小さくなります(小球性)。そのほか、葉酸やビタミンB12が不足したり、再生不良性貧血や白血病といった血液の病気にかかると、貧血が起こります。

Q どうして鉄が不足するの?

鉄分を十分に摂取できていないか、体のどこかが出血して鉄を失っているかのどちらかが原因です。月経がない人(男性や閉経後の女性)や、月経の量が通常(※1)の女性が鉄欠乏症貧血になった場合は、消化器官に潰瘍やがん、肛門に痔などがあって出血している可能性が高いです。内科で内視鏡や胃カメラによる検査を受けてください。そこで異常が見つからなくても、月経のある女性は、婦人科系の病気が隠れている可能性もあります。必ず婦人科にもかかって、子宮がん検査や超音波検査を受けてください。

※1 通常、月経が始まってから終わるまでの経血量は50~150cc。目安は、多い日にナプキンを2~3時間変えなくても大丈夫な程度。昼間に、吸収率の高い夜用のナプキンをつけても、1時間程度もたない場合は、経血量が多い「月経過多」と考えられる。

Q 貧血を招く婦人科疾患って?

代表的なものは、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープです。月経は、子宮の中にある内膜が剥がれ、血液とともに排出されることで起こります。子宮筋腫ができて子宮が大きくなったり、子宮内膜症で子宮の筋肉の中や外にも内膜ができたりすると、剥がれる内膜の面積が増える分、経血量も多くなり、貧血の原因に。このほか、婦人科系のがんにかかると貧血になる可能性があります。

●子宮筋腫
子宮に筋肉のコブができる疾患。月経のある女性の5人に1人は子宮筋腫があると言われている。筋腫が子宮内膜に突き出てできた場合(粘膜下筋腫)、剥がれる内膜の面積が増えるため、月経過多を引き起こす可能性がある。

●子宮腺筋症と子宮内膜症
子宮内にできるはずの内膜が、子宮の壁の中や卵巣、腹膜などにできる。子宮の外にできた内膜であっても、子宮内と同じように月経時に剥がれて出血する。病気が進行すると、子宮の壁が厚くなり、子宮が大きくなるため、経血量が増えて貧血を招く。

●子宮内膜ポリープ
子宮内膜が増殖して盛り上がる良性の腫瘍。増殖した分、剥がれる際の経血量が増えて、貧血を招く恐れがある。

●子宮頸がん
子宮の入口付近にできるがん。近年は若い女性もかかりやすく、出血が見られる頃には、がんが進行している場合が多い。

●子宮体がん
子宮の奥にできるがんで、40~60代に多い。初期段階から出血が起こりやすいため、閉経後に不正出血がある場合はすぐに病院で検査を。

Q 貧血になると、どんな症状が現れる?

貧血になると、体中に酸素が十分に行き届かず、倦怠感、めまい、立ちくらみ、動悸などが起こるほか、血圧が低下し、頻脈(1分間の心拍数が100回以上)がみられます。また、氷が無性に食べたくなるという方も多くいらっしゃいます。こういった症状が継続的に現れる方は貧血の疑いがあります。たまに、気分が悪くなって倒れることを「貧血を起こす」と表現する方がいらっしゃいますが、正確には血液検査をしてみないと貧血とは言いません。

Q 症状がなければ問題ない?

慢性的な貧血の方は、体が慣れてしまっていて自覚症状がないこともあります。ただ、普通に生活ができていたとしても、万が一事故などで大出血した場合、失血死してしまう危険性が高まります。内科系や婦人科系の疾患が原因で貧血になっている可能性もありますので、慣れているから大丈夫とは思わず、検査を行い、しっかりと治療してください。

Q どんな治療をするの?

鉄欠乏性貧血の場合は、鉄剤を処方します。内服薬が一般的ですが、胃がムカムカするなどの副作用が出る場合には、静脈注射を打つこともあります。同時に、潰瘍や子宮筋腫など、根本的な原因がある場合にはその治療も行います。経血量が多い方には、ピルを使って経血量を減らしたり、一時的に閉経状態にするといった治療もあります。

Q 予防法はある?

毎日の食事から鉄分をしっかりと摂取することです。肉・魚類といった動物性食品(ヘム鉄)と、ほうれん草やブロッコリーなどの植物性食品(非ヘム鉄)をバランスよく取ってください。非ヘム鉄はビタミンCと一緒に取ることで、吸収しやすくなります。鉄分の取り過ぎは、肝臓に負担を与えますが、食品から適度に取り入れている分には心配ありません。貧血は、消化器系や婦人科系の病気の発見につながりやすいので、1年に1回は血液検査を受けるようにしてください。

 

 

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