見直しませんか?毎日の朝食 ~朝食は「体の中の準備体操」
2017.09.01
まだまだ暑い日が続いていますが、夏から秋へと季節が少しずつ変化する9月。夏の疲れが出始め、季節の変わり目に体調を崩される方も多いのではないでしょうか。
今回は、秋もアクティブに活動するために、「朝食の効果」について大塚製薬の学術担当者に解説いただきます。
やまひら さとこ 氏 |
みなさん、朝ごはん食べていますか? 今朝は何を食べましたか?
日本人の朝食欠食率は、政府による朝食キャンペーンの効果で増加傾向が緩和したものの、男女ともに10%を超えています(図1)。
■図1 朝食欠食率の年次推移(20歳以上/平成17-27年)
注)「欠食」とは、「菓子・果物などのみ」、「錠剤などのみ」、「何も食べない」に該当した場合をいう。
出典:厚生労働省 平成27年国民健康・栄養調査
受験勉強や残業など夜型の生活習慣によって、朝十分な時間が取れないことが欠食の主な理由です。
そこで今回のテーマは、様々な研究データをもとに、「朝食摂取の効果」についてお話ししたいと思います。
朝食をきちんと食べることで期待される効果には、次のようなものがあります。
・脳の働きを活発にし、集中力や記憶力が高まる
・体温が上昇し、代謝が高まる
・太りにくい体をつくる
・疲労感が少なくなる
・便秘解消につながる
今回は、「生活の質」に大きな影響のありそうな赤字の3つの項目をみていきたいと思います。
01.バランスの取れた食事が脳の働きを活発にし、疲労感を抑え、集中力を高める
これまで朝食では、脳の唯一のエネルギー源である「糖質」が重要と考えられていました。
しかし今では、糖質だけでなくその他の栄養素をバランスよく含むことがより重要であることが分かってきました。
男性対象者に、①栄養バランスの良い朝食(洋風パン食)、②栄養調整食品、③おにぎり(具なし)、④欠食(水のみ)の場合で、自覚症状(疲労感・集中度)および知的作業能力に及ぼす影響を検討しました。その結果、糖質を多く含むおにぎり単品や欠食時と比べ、栄養バランスのよい朝食を食べると、疲労感を抑え、集中力および知的作業量を高めることがわかりました(図2)。
摂った栄養素を体に役立つ形にする機能を「代謝」といいますが、ビタミン・ミネラルが不足するとこの代謝がスムーズに進みません。ガソリンの役割をする糖が力や熱に変わるとき、ビタミン・ミネラルは無くてはならない存在なのです。この試験で、ビタミン・ミネラルを含む栄養バランスの重要性が確認されました。
■図2 朝食欠食および朝食のタイプによる集中度の違い
出典:日本臨床栄養学会雑誌 2007;29(1):35-43
02.体温が上昇し、代謝が高まる
次に、運動と同様、朝食には体のウォームアップ効果があるというお話です。
体温が低下している時は脳や筋肉の活動も不活発な状態にあります。
起床時は体温が低く、体は不活発な状態にあるので、ウォームアップの必要があります。具体策は2つ。1つ目は運動で筋肉を動かすこと、2つ目は朝食を摂ることです。
通常、体温は入眠すると急降下し、起床時は日中よりも低体温になります。朝食抜きの生活は、さらに低体温の傾向となります(図3)。通勤などで体を動かすと体温は上がりますが、朝食を抜くと就業時間帯に体温が維持できず、低下します(図4)。
朝食を摂ると消化管が筋肉運動し、それにより得られた熱で体温は上昇し、体はウォームアップされます。近年、朝のラジオ体操が見直されていますが、「体の中の準備体操」となる朝食についても見直す必要があるようです。
■朝食の有無と体温の変化
出典:鈴木正成 『実践的スポーツ栄養学』P144⑥なぜ朝食が大切なのか?
03.太りにくい体をつくる
最後に、ダイエット目的で朝食を抜く人がいますが、それは逆効果という話題です。
毎日、きちんと朝食を摂ることは体型の維持にも効果的です。
BMI*(Body Mass index:体格指数)が25以上の肥満傾向にある女性を対象者に、「朝食高カロリー」と「夕食高カロリー」の2つのダイエット食で過ごしてもらい、12週間後の体重や胴囲を評価しました。
1日の総摂取エネルギーは同じにも関わらず、12週間後、「朝食高カロリー」群の体重がよりスムーズに減少し、しかもウエスト値も減りました(図5、図6)。国の調査でも、朝食欠食傾向にある生徒では、肥満傾向が強いこともわかっています。効果的な体重管理を行いたいならば、“朝はしっかり、夜は控えめ”が良い方法で健康的と言えそうです。
*BMIの算出方法:「体重(kg)÷(身長×身長(m))」
■「朝食抜き」あるいは「夕食抜き」ダイエットにおける減量効果の違い
出典:Obesity , 21 , 2504-2512 , 2013
このように、朝食を食べるといろいろと体に良いことがあります。
大切なことは「炭水化物+タンパク質+脂質」の三大栄養素に加え、ビタミン・ミネラルをバランスよく食事から摂るということ。朝少し早く起きてゆっくりと朝ごはんを食べると、心にも余裕がでてきて1日を有意義に過ごせます。
“朝は食欲がない”という方も、始めは牛乳一杯でも良いので栄養バランスを意識して少しずつ品目を増やしてみてはいかがでしょうか。