【誰でも分かるマインドフルネス入門】第ニ回「マインドフルネス瞑想の効果とは」
今回のシリーズでは、初めての方にも分かりやすく、国内最大のマインドフルネスアプリUpmind(アップマインド)の開発者である箕浦 慶 氏が、マインドフルネスについての様々な情報を解説していきます。
第一回目は、「マインドフルネスとは何か」について共に学びました。第二回目は「マインドフルネス瞑想の効果とは」。
マインドフルネスは、脳にとって様々な良い効果があることが、近年の脳科学の技術の発展によって実証されてきています。マインドフルネスは脳の休息方法であり、トレーニングとも言えます。一緒に効果について学んでいきましょう。
筆者:箕浦 慶 氏
オーストラリア・パース生まれ。2015年に東京大学工学部を卒業、チームラボに入社。2016年までスマートフォンアプリのエンジニアとして開発業務に従事。2017年に米Bain&Company(戦略コンサルティングファーム、東京支社)に転職し、経営戦略の立案に従事。2021年にUpmind株式会社を設立。瞑想歴はゴア(インド)で体験してから10年以上。
Upmind株式会社について:
Upmind株式会社は、2021年5月に設立した、“人々の人生と心を豊かにする”をミッションに活動する、東京大学発のウェルビーイングテックカンパニー。主に、80万以上ダウンロードの人気マインドフルネスアプリ「Upmind」を開発・運営(東京大学 滝沢龍研究室とも共同研究、2023年グッドデザイン賞を受賞)。心に余白をもつことの習慣化を支援するための事業を企画しています。
1. マインドフルネスはどのように生まれたのか
まず、マインドフルネスがどのように生まれたのかについて学んでいきます。
マインドフルネスの源流は、仏教の開祖であるブッダまで遡ると言われています。
但し、現在のマインドフルネスとして知られているものは、マサチューセッツ大学医学大学院教授のジョン・カバット・ジン博士が、現代の人が取り組みやすいように、宗教的な要素を一切排除して体系化した瞑想法が起源となります。
仏教の瞑想とは異なり、無になろうと(解脱)する必要はなく、ストレスを低減することを目的に、呼吸を中心とした“今この瞬間”の体験に注意を向けるものとして、瞑想法を体系化しました。
その後、脳科学の発展と共に、脳を休息する・機能を向上する効果が実証されたことで、科学的な健康法として認知され、海外を中心に多くの人に普及していきました。実証されてきた効果について、次のセクションで紹介していきます。
2. 脳を休息する効果について
多くの人がマインドフルネスを実践すると、頭が休まることを体感します。
私たちの脳にはDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という神経回路があり、何も考えていないと思う時でも、多くのエネルギーを消費しながらこの回路が活性化しています。DMNには、新しい創造的なアイデアを生み出すなど重要な役割があるのですが、DMNの活動が続く(無意識に考え続けている)と脳の疲労につながります。
マインドフルネスは、過去や未来について無意識に考えるのではなく、意識的に“今この瞬間”に注意を向けることで、DMNの活動を休めることができ、脳の休息の効果があることが分かっています。
3. 脳の機能を向上する効果について
また、マインドフルネスは脳の機能を向上することが、脳のMRIスキャン画像の解析などを元に実証されてきています。
2010年のハーバード大学の研究で、1日30分程度のマインドフルネス瞑想を8週間続けることで、海馬の灰白質の密度が高まることと、扁桃体の反応が緩やかになることが分かりました。海馬は、ストレス耐性・短期記憶力に関わる脳の部位ですが、そこの機能が向上したのです。また、扁桃体は怒りや不安を生み出す脳の部位ですが、反応が緩まることで、感情コントロール力が向上すると考えられます。
また、2014年のブリティッシュコロンビア大学の研究では、マインドフルネスを習慣化することで、前帯状皮質の部位が活性化することが分かりました。前帯状皮質は、自己抑制力や過去の経験を元にした最適な意思決定を下す力に関わる脳の部位となります。活性化することで、集中力・意思決定力が向上すると考えられます。
マインドフルネスは脳の休息方法であると同時に、脳の機能を向上させるトレーニングでもあるのです。
4. どのくらい続けたらいいのか
効果を得るために、20分の瞑想を8週間続けることを推奨するものもありますが、個人差があります。
筋肉のトレーニングと同じで、自身のペースで、継続して取り組んでいくことが大切です。
脳には可塑性があり、継続していく中で、関連する脳の神経間のネットワークが強化されていきます。
長年、瞑想を続けているチベット仏教の僧侶の脳年齢は、実年齢よりも若いことなども分かっています。まずは、2分からでもアプリなどを活用して、自身に合ったペースで取り組んでみましょう。
5. 最後に
私たちは、体を鍛える・休息することはしますが、どうして脳に対しては同様に取り組まないのでしょうか。
脳は体と同じ大切な資本となります。マインドフルネスで脳の休息・機能向上への取り組みを今日から一緒に始めてみませんか?
次回は最終回となりますが、海外でどのようにマインドフルネスが普及してきたかを紹介していきます。