【教えて!沿線のお医者さん!】2023年版花粉症の基礎知識と対策法(神戸大学+阪神電車)

日本気象協会によると、2023年における関西地方のスギやヒノキの飛散量が、昨シーズンよりも非常に多くなると予測されています。花粉症の患者数が増加傾向にあるといわれている今、既に症状が現れている人も多いかもしれません。神戸大学医学部附属病院の由井光子先生に基礎知識や対策法を伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2023年4月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科
助教 由井 光子先生
副鼻腔炎(ふくびくうえん)、腫瘍、炎症疾患、アレルギー疾患など、鼻疾患全般に詳しい。難治性に指定されている好酸球性副鼻腔炎などの治療や手術も行う。
『花粉症は生活の質(QOL)を下げますので、我慢せず、症状がまだ出ていないか軽いうちに、医療機関で治療を受けることをおすすめします。』

●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/


Q 花粉症とは?

花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患です。春にピークを迎えるスギ、ヒノキのほかに、5~7月に飛散するカモガヤやハルガヤ、8~10月のブタクサやヨモギなども原因になります。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのほかに、目のかゆみや充血の症状が現れる人もいます。

Q 花粉で症状が現れるのはなぜ?

本来は人体に無害である花粉ですが、花粉症の人は、花粉を吸い込んだとき、これを排除しようとする免疫が働き、抗体(IgE抗体)をつくります。すると、次に花粉に触れたとき、この抗体が皮膚の表面や粘膜に多く存在している肥満細胞と結合し、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が分泌され、防御反応(花粉をくしゃみで吹き飛ばす、鼻水で洗い流す、鼻詰まりで侵入を防ぐなど)が起こります。この反応が過剰に働くことをアレルギー反応といい、原因となる物質をアレルゲン(抗原)といいます。アレルゲンは花粉のほかに、ダニやハウスダスト、猫や犬など様々なものがあり、複数のアレルゲンに反応する人もいれば、どのアレルゲンにも全く反応しない人もいて、遺伝や体質、生活環境の違いが影響していると考えられています。

Q 風邪との見分け方は?

風邪の場合は症状が現れてから1週間程度で緩和してきますが、花粉症の場合は、アレルゲンである花粉が飛散している期間はずっと続きます。ただ、花粉の飛散期間中でも花粉が飛んでいない環境では症状が治まってくるので、場所によって症状が悪化する場合は、花粉症の可能性が高いです。また、花粉症による鼻水は、透明で粘り気がなくサラッとしているため垂れやすいです。目のかゆみも花粉症だけにみられる症状です。

Q 治る可能性はある?

残念ながら自然に治ることはほとんどなく、スギ花粉症などは若年で発症して高齢まで持ち越していきます。現在、唯一花粉症を完治させる可能性のある手段が、「アレルゲン免疫療法」といわれる治療です。長期間ほんの少量ずつアレルゲンを摂取して身体を慣れさせ、アレルギー反応が起こらないようにする治療法で、2014年から、舌下に薬をしばらく置いた後に飲み込む「舌下免疫療法」が始まりました。それまで行っていた注射による「皮下免疫療法」に比べて副作用が少なく、自宅で続けられるメリットがあります。3年以上の治療期間を要しますが、約80%の人に完治が期待できます。

Q 症状を緩和するには?

花粉症は、花粉が粘膜に触れることで発症する疾患です。花粉飛散期間中に外出するときはマスクやメガネをつけ、花粉が付着しにくいツルっとした素材の服を着用し、外出先から帰ったら顔や手を洗う、洗濯物を外に干さない、掃除をこまめにする、換気を控えるなど、なるべく花粉に触れない生活を心がけてください。いったん重症化してしまうと、粘膜が敏感になり、少量のアレルゲンにも反応しやすくなるため、花粉を防いでもなかなか症状が治まりません。そうなる前に治療をして悪化させないことも、大切な選択肢のひとつです。

Q 効果的な治療法はある?

お薬(飲み薬、貼り薬、点鼻薬、注射薬)による療法が一般的です。飲み薬で多いのが、抗ヒスタミン薬(くしゃみ、鼻水)や抗ロイコトリエン薬(鼻づまり)の治療です。抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、第一世代で現れた眠くなる、口が乾くなどの副作用が出現しにくくなるよう開発されたのが第二世代で、作用時間が長く、服用回数が少なくて済むものもあります。どちらも市販薬にあります。眠くなるのが困る人や薬の服用を1日1回で済ませたい人は第二世代がオススメですが、第二世代でも眠くなる可能性があるので、服用後は運転を控えるように記載されている場合は注意してください。市販の点鼻薬の中には血管収縮薬が入っているものが多く、即効性はありますが、長期で使用していると逆に鼻づまりが悪化します。処方薬には市販されていないものもたくさんあるので、耳鼻咽喉科で自分に合う薬を処方してもらうと良いでしょう。

Q 手術はできるの?

重症度が高い場合、アレルギー反応が起こる粘膜をレーザーで焼いて変性させる手術や、鼻の形を変えて通りをよくする手術、鼻水を出す神経を切断する手術を行うことがあります。手術は花粉症を治す治療ではありませんが、症状を強く抑えることができます。症状や鼻の構造によってどの手術が良いか異なります。薬の治療だけでは効果が不十分と感じている方、薬を減らしたいと考えている方は、耳鼻咽喉科医に相談してください。

 

 

 

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