【教えて!沿線のお医者さん!】白内障と緑内障ってどう違うの?(神戸大学+阪神電車)
白内障も緑内障も、発症する人がとても多い、よく知られた眼の病気です。名前が似ていて混同されがちですが、実は原因も症状も治療法も全く異なります。そこで、神戸大学医学部附属病院の中村 誠先生に、それぞれの特徴や治療法について詳しく伺いました。正しい知識を得て早期発見に努めましょう。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2021年10月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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<教えてくれた先生はコチラ!>
神戸大学医学部附属病院 眼科
診療科長/教授 中村 誠先生
緑内障をはじめとする視神経が障害を起こす疾患について、発症のメカニズムの解明と、その治療法や治療薬の発見のため、日々研究を重ねる。
『白内障や緑内障は、残念ながら予防法はありません。定期的に眼科で検査をして、早期発見を心がけてください。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q 白内障とはどんな病気? 治療法は?
眼の中の水晶体(カメラのレンズのようにピントを調節する)が加齢によって劣化し、濁ってしまう病気です。本来は透明な構造物が濁るので、物がかすんで見えたり、メガネをかけても字が読みづらくなったりします。また、不均一に濁るため、光が水晶体を通るときに散乱し、ちょっとした光でも眩しく感じます。窓ガラスが曇りガラス・磨(す)りガラスへと変化するように段々見えづらくなり、最終的には、障子紙をかざしたように、光は感じるけれど何も見えないという状態になります。濁ってしまった水晶体を元の透明に戻したり、進行を止めたりする方法は今のところありません。そのため、濁った水晶体を取り除き、人工のもの(眼内レンズ)に入れ替える手術を行います。他の眼の病気を併発していない場合、処置は10~20分程度で済むことが多いです。
Q 緑内障とはどんな病気ですか?
ひと言でいえば、視神経が傷つく病気です。視神経は眼で見た情報を脳に伝えるケーブルのような役割をしていて、傷つくとその割合に応じて視野が欠けていき、失明に至る危険もあります。原因は明らかになっていませんが、眼圧が上がると視神経のつけ根(視神経乳頭)が圧迫されて傷つくことが分かっています。眼圧は、眼の中を循環している栄養を届ける液体(房水(ぼうすい))の排出口(シュレム管)が、虹彩(こうさい)で塞(ふさ)がったり、フィルター部分(線維柱帯)が目詰まりを起こしたりすると、水量が増え外側に圧力がかかって上昇します。ただ、眼圧が高くても視神経が傷つかない人や、逆に正常値でも傷ついてしまう人など、視神経が傷つく眼圧の高さには個人差があり、遺伝的な要素も影響します。
日本では、眼圧が正常なのに緑内障になるケースが最も多いです。
Q 緑内障には、どんな症状が現れますか?
急激に眼圧が上がった場合は、激しい眼痛や頭痛、眼の充血、嘔吐、腹痛、胸痛などの発作が起こりますが、ほとんどの場合は自覚症状がありません。また、視野がだんだん欠けていきますが、よほど狭くならないと気づきません。というのも、もともと視野には見えていない部分(盲点)があり、脳が勝手に欠けている部分の映像を作って埋め合わせ、全て見えているかのように錯覚させています。その機能が働くので、普段私たちが盲点があっても気づかないのと同じように、緑内障で視野が欠けても気づかないのです。症状に左右差があると、見えているほうの眼で補うこともできるので、より気づきにくく、視野が狭くなっていると気づいた時には末期だったというケースがほとんどです。
Q 視野が欠けていることに気づく方法は?
新聞の株式市場欄を開いてどちらかの眼を覆い、もう片方の眼で中央部の一点だけを見てください。脳は、勝手に映像を作り出しますが、細部までは描けません。そのため、視野が欠けていると、その部分だけ文字のない灰色のような紙面が見えます。正常であれば、視線を動かさなくても小さな文字が全体に連なっていることが分かります。
Q 緑内障の治療法は?
傷んでしまった視神経を元に戻すことはできませんが、眼圧を下げることで、それ以上傷つかないようにできる可能性はあります。水晶体が分厚く膨らんで前方にある虹彩を押し出し、隅角(ぐうかく)(シュレム管がある部分)を塞いで眼圧が上昇している場合(閉塞隅角緑内障)は、水晶体を眼内レンズに入れ替える白内障と同じ手術を行うことで進行を止めることができます。隅角が塞がっていない場合(開放隅角緑内障)は、まず眼圧を下げる点眼を試みます。効果がなければ、目詰まりを起こしている線維柱帯を切開したり、切除したりする手術をして房水の流れを良くします。ただ、視神経は加齢でも少しずつ機能が失われていくので、眼圧を下げたとしても完全に進行を食い止めることはできません。そのため少しでも早く治療を開始することが大切です。健康診断で行う眼底検査で視神経が傷ついているかどうかが分かりますが、眼科で眼圧の検査や隅角の検査を受ければ、視神経が傷つく前の段階で発見できる可能性があります。40歳以上の方は、年に1度、緑内障の検査を受けることをおすすめします。
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