【教えて!沿線のお医者さん!】突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)を発症したら、一刻も早い受診を!(兵庫医科大学+阪神電車)

「大きな音を聞いたわけでもないのに、急に耳が聞こえづらくなった」「昨日まで何ともなかったのに朝起きたら耳鳴りが止まらない」。その症状、突発性難聴かもしれません。もし発症したらどうすればいいのでしょうか?特徴的な症状や治療法などについて、兵庫医科大学の美内慎也先生に詳しく伺いました。

※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年11月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。

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<教えてくれた先生はコチラ!>

兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
講師 美内(みうち) 慎也先生
中耳(ちゅうじ)炎や耳硬化症に対する鼓室形成術やアブミ骨(こつ)手術、人工内耳(ないじ)埋め込み術など、中耳・内耳の手術を専門とする。外来は水曜と木曜日に担当しており、突発性難聴の診察も行う。

●兵庫医科大学病院 武庫川駅→徒歩約5分
https://www.hosp.hyo-med.ac.jp


Q 突発性難聴とは?

ある日突然、耳の聞こえが悪くなる病気です。聞こえなくなる度合いは人それぞれで、中にはめまいを伴う場合や、耳が詰まった感じ(耳閉感)や耳鳴りだけを訴える方がいて、検査をして聴力の低下がわかるケースもあります。年代・性別に関係なく発症し、特に40~60代の働き盛りの方に多い傾向があります。

Q どうして聞こえなくなるの?

内耳の聴覚を司る蝸牛という器官にある有毛細胞(下記参照)が傷ついて壊れてしまうことが原因です。有毛細胞がなぜ傷ついてしまうのかは明らかになっておらず、血流障害やウイルス感染が関係しているのではないかと考えられています。

■有毛細胞
感覚毛と呼ばれる細い毛が束になって生えた細胞。片耳だけで約15,000個も並んでおり、この毛が音の振動をキャッチして電気信号に変え、聴神経から脳に伝達することで音が聞こえる。

Q 発症したら医療機関に行ったほうがいいの?

突発性難聴は神経の病気なので、一旦ダメージを受けて、その状態が定着してしまうと元には戻りません。そのため、症状があらわれたらできるだけ早期に治療を開始する必要があります。1週間以内に治療を開始すれば4割の方が完治するとされていて、治療が遅れるほど完治する率は低くなります。もし症状が耳鳴りや耳閉感だけだからと我慢して数週間経ってしまうと、手遅れになってしまうことも。おかしいと思ったら、すぐに医療機関を受診してください。

Q 突発性難聴の特徴的な症状は?

突発性難聴は突然起こる病気で、徐々に悪くなるということはありません。また、短時間や数日で勝手に症状が治まるということもありません。聴力の低下を感じた場合はもちろん、耳鳴りや耳閉感だけの場合でも、突然発症して続くようであれば、突発性難聴が疑われます。また、治療をして完治すれば通常は再発しないのも、突発性難聴の特徴です。

Q 突発性難聴と間違えやすい病気はある?

めまいなどの症状を伴う突発性難聴の場合、区別がつきにくい病気にメニエール病があります。メニエール病は、めまいと共に低音部の聞こえが悪くなる病気ですが、耳鳴りや耳閉感のみで、めまいを伴わないケースもあります。突発性難聴と異なる点は、症状の変動や再発が起こりやすいことと、原因が内リンパ水腫(内耳の中の器官を満たしている液体が増えて腫れる)であることですが、初期の検査では診断がつきにくく、腫れを抑える薬を投与して聴力が改善するか経過を観察するなど、いくつかの検査や診察の結果を総合的に判断して診断します。

Q どんな検査をするの?

聴力検査を行い、聴力が低下しているかどうかを調べます。聴力低下がみられる場合、耳の中を診察して耳の病気がないか、加齢による聴力変化は考えられないかなど、ほかの病気の可能性を探り、原因が見当たらなければ、突発性難聴だと診断できます。また、内耳道内に聴神経腫瘍という腫瘍ができると、神経が圧迫されて聴力が落ちることがあるため、治療しても治りが悪い場合や、メニエール病でもないのに症状が反復する場合は、MRI検査で腫瘍ができていないかどうかを調べることもあります。

Q 突発性難聴の治療は?

日本では、ステロイドホルモンを投与する治療が主流です。加えて、原因のひとつだと考えられている血流障害を改善する薬やビタミン剤を補助的に投与します。ステロイドホルモンの投与法は、内服と点滴がありますが、点滴のほうが多くの量を投与できるため、特に重度の方には点滴治療をすすめています。点滴治療は、通常では1週間から10日間の通院で行いますが、ステロイド投与による血糖値の上昇をコントロールする必要がある糖尿病患者さんには入院をすすめています。専門的な治療になるため、かかりつけの先生から紹介を受け、大学病院などでの対応となる場合が多いです。

Q 予防はできる?

突発性難聴が発症する原因と考えられている血流障害やウイルス感染は、ストレスがたまると起こりやすくなると言われています。現代人が精神的なストレスを受けずにいることは難しいと思いますが規則正しい生活を送り、適度な運動を行うなど、身体的なストレスを取り除くように心がけましょう。

 

 

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