【教えて!沿線のお医者さん!】放っておくと危険!睡眠時無呼吸症候群の危険性(神戸大学+阪神電車)
睡眠時無呼吸症候群という病名はある程度知られているものの、その危険性についてはあまり知られていません。交通事故を起こした運転者が睡眠時無呼吸症候群が原因で運転中に居眠りをしてしまったというケースもあり、命に関わる病気でもあります。その理由や原因など、神戸大学医学部附属病院の西村善博先生に詳しく伺いました。
※この記事は、阪神電車の沿線情報紙「ホッと!HANSHIN」2020年10月号に掲載された情報であり、掲載時点の情報となります。また、駅名表記について、記事に特段記載がない限り、阪神電車の駅となります。
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https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/doctor/
<教えてくれた先生はコチラ!>
神戸大学医学部附属病院
副病院長・教授 西村 善博先生
専門は呼吸器内科学分野。呼吸器内科・外科が連携して治療にあたる呼吸器センターのセンター長も務める。
コメント『睡眠時無呼吸症候群は自分では気づきにくく、事故を起こしてから分かる疾患になっているのが非常に残念。積極的に検査を受けるようにしてください。』
●神戸大学医学部附属病院 高速神戸駅→徒歩約15分
https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/
Q 睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気?
睡眠時に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気のことで、医学的には、睡眠時に10秒以上呼吸が止まっている状態が、1時間に5回以上または一晩で30回以上ある場合、睡眠時無呼吸症候群であると診断します。昼間に眠気を感じやすく、以下のチェックリストの点数が11点以上あれば、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いと考えられます。なかには眠気があるのに自覚していない方や、眠気を自覚していても睡眠不足や疲労だと思って見過ごす方もいて、パートナーの方が無呼吸に気づいて受診される場合が多いです。
Q 昼間の眠気以外に症状はある?
多くの方が睡眠中に「いびき」をかかれます。「起床時に頭痛がする」「熟睡感がない」「夜間にトイレが近い」という症状がみられる人の中にも、この病気が隠れている場合があります。また、高血圧で治療薬を飲んでも血圧(特に朝の測定値)が下がらない方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
Q 放っておくと危険なのはどうして?
睡眠時無呼吸症候群の方は、夜間寝ていても脳は起きている状態です。このため昼間に眠気が生じて、交通事故などの事故を起こしてしまう危険性がとても高くなります。また、酸素不足から不整脈や高血圧にもなりやすく、心不全や動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす可能性も非常に高くなります。睡眠時に呼吸が止まったまま死亡するということはほとんどありませんが、こういった二次的要因で死亡に至ってしまうケースが多い※です。
※ 睡眠時無呼吸症候群の交通事故発生率は、健常者と比較して約7倍、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性は約3~4倍になるというデータもある。
Q 原因は?どんな人がかかりやすい?
多くの方が、睡眠時に空気の通り道である気道が、舌や脂肪、扁桃腺などで圧迫されて狭くなることが原因で起こる「閉塞性タイプ」です。首の周りに脂肪がついている肥満の方、日本人女性に多いあごが小さい方、アデノイド(咽頭扁桃(いんとうへんとう))肥大の子どもがかかりやすい傾向にあります。閉塞性以外では、脳からの呼吸に関する指令を司る自律神経機能の低下が原因で起こる「中枢性タイプ」があり、心機能や脳血管に障害がある方がかかりやすいと言われています。全体的には、女性ホルモンであるプロゲステロンに、呼吸中枢を刺激する働きがあることから、月経がある女性は比較的無呼吸症状を起こしにくく、男性や閉経後の女性のほうが発症しやすいと言えます。
Q どんな治療法がある?
軽症の方は下あごを上あごよりも前方に出すマウスピースを睡眠時に装着し、気道を広く保つ治療を行います。重度の方は鼻に器具を装着して空気を送り込み、気道を広げるCPAP(シーパップ)療法を行います。マウスピースやCPAP器具を装着すると寝つきにくかったり眠りが浅くなったりするように感じますが、実際はよく眠れており、比較にならないほどスッキリしたと喜ばれる方が非常に多いです。肥満の方は痩せることで改善する場合がありますが、睡眠時無呼吸症候群になると完治させるのは難しく、長期間にわたる治療が必要です。
Q 検査するにはどうすればいい?
今は自宅でできる簡単な検査があり、たいていの内科医院や診療所、クリニックのほか、一部の耳鼻科で行えます。さらに詳しく調べる必要があれば、専門の医療機関に入院して精密検査を行います。睡眠時無呼吸症候群は、決して珍しい病気ではありません。しかし、睡眠時のことなので、自分では気づいていない患者さんが非常に多いのが現状です。将来の自分の生命予後に関わる病気なので、昼間に眠気がある方、いびきをかく方は、ぜひ一度検査を受けてみてください。
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