この冬を健康に乗り切るために気を付けるべきこと

2017.12.01

12月に入り、朝夕の冷え込みが厳しくなり、空気も一段と乾燥してきました。夏は暑さで汗をかき水分補給に気を使う方が多いと思いますが、冬場は水分をあまり取らない方が多いのではないでしょうか。体調管理が難しい寒い季節は、栄養管理に加え、乾燥に対する注意も必要です。

今回は、冬場の乾燥が意外なところに影響を及ぼしている点について、大塚製薬の学術担当者に解説いただきます。

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やまひら さとこ 氏
大塚製薬株式会社
ニュートラシューティカルズ事業部、学術担当。
熱中症予防指導員・肥満予防健康管理士として、社内外の研修等で講師としても活躍中。

気づかないうちに体内の水分は失われている

冬場はあまり汗をかかないから水分補給が不要というわけではありません。人は普通に生活していても、一日に約2.5リットルの水分を失うことがわかっています。それに対して食事中に摂取する水分や体内で作られる水の量は1.3リットル。失った水分を補うためには、飲料から1.2リットル程度を摂取する必要があります。(図1)。2.5リットルの水分排泄のうち、尿や便以外に安静にしていても1日に約900ミリリットルの水分が失われますが、これを不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といいます。空気が乾く冬場は身体も乾燥し、もっと多くの水分が排出されることになります。

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ここで1つ着目したい点ですが、不感蒸泄には『汗』は含まれません。汗をかいたときにはその日の早いうちに失われた水分と電解質を補給し、摂取量と排泄量のバランスを保つことが重要なのです。また、水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質を補給すると水分キープ力が高まることもわかっています。図2によると、湿度が低くなるほど、身体から失われる水分量が増加することがわかります。汗をかきにくい寒い季節でも、空気が乾燥していると、知らないうちに身体は乾いてしまいます(図2)。こまめな水分補給を心がけましょう。

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湿度と冬場の体調管理

厚生労働省のホームページを見ると、「空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。」とあります。冬に感染症が流行しやすい理由の1つに気温と湿度が考えられます。低温・低湿度を好むインフルエンザウイルスなどにとって、寒くて空気が乾燥する冬は最適な環境なのです。高温・多湿の夏よりも長く生存できるようになるため、加湿などで適切な湿度を保つことが対策の一つとされています。では、その気道粘膜の防御機能とはどのような機能なのか、次に見ていきます。

気道粘膜の防御機能とは

のどや鼻の粘膜には、線毛という細かい毛がびっしりと生えていて、その周りは線毛間液と外層粘液で覆われています。のどや鼻から入ってきたウイルスは、この線毛と粘液の働きによって体外へ排出されますが(図3)、乾燥した環境下では、線毛間液が少なくなったり外層粘液の粘度が上がるため、ウイルスを排出する機能が低下します。機能が低下した状態のときにウイルスが入ってくると、粘膜に長くとどまって増殖、あるいは細胞の中に入り込んでしまい、結果的に、感染が起きてしまうのです。

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図3 線毛機能の働き
ソース日本公衆衛生学会発表資料2010より

このため、線毛と粘液が正常に機能するように保つことが対策のひとつとなります。この線毛輸送機能を維持する上で、イオン飲料の摂取が有用であるという研究結果が報告されています。イオン(電解質)を含む飲料は身体を長時間潤してくれるので、マスクや加湿器という外からの対策と併せると、より効果的です。

加えて、栄養や休養をしっかり摂り、規則正しい生活を心掛けることも感染のリスクを遠ざける上では重要です。過度なストレスや睡眠不足を感じている方、小さなお子さまやご高齢者など体力のない方は、うがい、手洗い、そして水分+イオン補給を毎日の習慣とするよう心掛けましょう。

いかがでしたか?
冬場は空気が乾燥している上に、暖房器具の使用により屋内ではさらに湿度が低くなりがちです。湿度計を置いて、室内の湿度コントロールをするのと同時に、マスクやうがいに加え、イオン飲料による水分補給も意識して頂くとさらに心強いかもしれません。しっかり乾燥対策を行い、冬を健康に過ごしてください!

※参考資料:厚労省平成19年12月 『インフルエンザの予防等基礎知識普及啓発資料』より

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