WellTOKK 2018 vol.11 Autumn

Well TOKK Wellness講座

認知症への理解と心がまえ

今日から始める認知症予防

高齢化に伴って増えている認知症。一旦症状が出ると治療は難しいとされていますが、発症前に発見して対応すれば発症しても進行を遅らせる可能性があります。体と心を健康にし、それを少しでも長く維持するためにどんなことをすればいいのでしょうか。

平田結喜緒先生

監修:平田ひらた 結喜緒ゆきお先生

(公財)兵庫県予防医学協会健康ライフプラザ参与。前先端医療センター病院長。東京医科歯科大学名誉教授。専門分野は内分泌代謝学、高血圧、分子血管生物学。日本内分泌学会評議員・理事、日本心血管内分泌代謝学会評議員・理事、日本心脈管作動物質学会評議員・理事、日本糖尿病学会評議員、日本高血圧学会評議員などを歴任。

認知症はどんな病気?

認知症になると、昔のことは覚えていても、ついさっきやったことを忘れるなど、もの忘れがひどくなります。更に、今日が何日か、自分が今どこにいるのかが分からなくなる、長年やっていた炊事の仕方を忘れるなどの症状が表われ、1人で日常生活を行うことが困難になります。もっと進むと家族の顔を忘れたり、徘徊したりすることも。厚生労働省によると、2012年における65歳以上の認知症患者数は約462万人で、約7人に1人ですが、2025年には約5人に1人になると推定されています。

認知症の種類

認知症にはいくつかの種類があります。最も多いのがアルツハイマー型認知症で全体の7割近くを占めています。原因は不明ですが、アミロイドβという特殊なたんぱく質が脳に溜まって神経細胞が死んでいき、脳が萎縮して正常に働かなくなると考えられています。次に多いのが脳血管性認知症で約2割あります。これは脳梗塞や脳出血が原因で脳の様々な部位に障害が起こり、認知症が現れます。他に、脳でレビー小体という特殊なたんぱく質が増加することが原因で起こる認知症もあります。

健康な人の大脳とアルツハイマー型認知症患者の大脳

脳の神経細胞が壊れると、古い記憶を貯蔵する大脳皮質や新しい記憶を貯蔵する海馬が萎縮して空洞化していきます。

健康な人の大脳とアルツハイマー型認知症患者の大脳

老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れ

歳をとると誰でももの忘れするようになりますが、老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れは下表のように異なります。
老化によるもの忘れと認知症によるもの忘れ もの忘れ

治る認知症もある

認知症は1つの病気ではなく、様々な原因から認知能力が障害される状態です。今は治せない認知症も多いのですが、中には原因を治療することによって認知能力が回復するものもあります。例えば、頭を打った衝撃などで脳の表面に血液が溜まって起こる「慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)」や髄液が溜まる「正常圧水頭症」では脳を圧迫するために認知症と似た症状が出ます。しかし、早期発見して原因を取り除けば、認知症の症状が改善したり、完治するものもあります。また、「甲状腺機能低下症」による認知症では甲状腺ホルモンを投与すると症状が改善します。

早期発見・早期対策で発症を防ぐ

ここではアルツハイマー型認知症を中心に見ていきましょう。現在のところ、アルツハイマー型認知症は、一度発症すると薬で進行を遅らせることはできても、元通りに回復させることは困難とされています。一方、認知症の予備軍にあたる軽度認知障害(MCI)の研究が進んでいます。厚生労働省によると2012年時点でMCIの人は全国に約400万人いると推定されていますが、そのすべてが認知症になるわけではありません。早期にMCIを発見し対応することによって発症を予防したり、発症しても進行を遅らせる可能性があります。アルツハイマー型認知症を予防するには普段から認知症発症の危険因子とされる肥満、糖尿病、高血圧など生活習慣病にならないようにすることが肝心です。
認知症の簡単な診断法
医療機関で認知症の診断に広く利用されている「長谷川式認知症スケール」の一部をご紹介します。

歳はいくつですか?

今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか?

私たちが今いるところはどこですか?

これから言う3つの言葉を言ってみてください。
あとの設問でまた聞きますのでよく覚えておいてください。
以下の系列のいずれか1つで行う。
1a)桜 b)猫 c)電車 2a)梅 b)犬 c)自動車

100から7を順番に引いてください。
100―7 は? それから7 を引くと?

このような質問をして、認知症かどうかを判断する材料にします。詳しくはかかりつけ医にご相談ください。

認知症の予防ポイントはこれ!

運動

運動不足も認知症発症リスクの要因の1つです。ウォーキング、ジョギング、水中歩行などの有酸素運動は認知機能を高める効果があるとされます。
最近は、単に運動するだけでなくデュアルタスク(二重課題)運動として行うと効果が更に高まるとされ、認知症予防教室などでよく指導されています。例えばウォーキングをしながら「100−7」、「93−7」、「86−7」……と計算をしたり、水中歩行をしながらしりとりをするというように、頭を使いながら運動するやり方です。

食事

認知症のリスクを下げる食事には、脳への栄養補給を十分行い、血流をよくする次のような食品がオススメです。

ビタミンA・C・Eが多く摂取できるピーマン、パプリカ、カボチャ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜

魚、特にDHA、EPAを多く含む青魚

ヨーグルト、味噌、納豆、漬け物などの発酵食品

ナッツやベリー類

オリーブオイル

肥満や糖尿病の原因となる糖質の多いスナック菓子、ごはんや麺類、甘い果物などは取り過ぎないように。また、高血圧につながる塩分も要注意です。

睡眠

高齢になると眠りが浅くなりがちですが、睡眠は脳にとって大切です。質のいい睡眠をとるように心掛けましょう。昼食後の短い昼寝もいいでしょう。パソコンやスマートフォンは脳を興奮させて寝つきを悪くするので、就寝前は控えましょう。寝酒は睡眠を浅くするのでかえってマイナスです。

知的な刺激、心の栄養

囲碁や将棋、パズル、計算ドリル、塗り絵などは脳が衰えるのを防いでくれます。読書や旅行、陶芸、音楽・映画鑑賞、料理、家庭菜園などを楽しむことも脳の活性化につながります。また、人とのコミュニケーションは脳にとって大きな刺激。運動や趣味も、1人でするより家族や仲間と一緒に楽しむといいでしょう。子どもや孫、ペットとの触れ合いも大切です。そうしたことが心の栄養となり、元気に長生きしようという意欲を高めてくれます。

禁煙

タバコは認知症の発症リスクを高める要因の1つとされていますので、禁煙に努めましょう。

認知症の予防ポイントはこれ! 認知症の予防ポイントはこれ!

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Well TOKK vol.11 2018年10月2日発行時の情報です。

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